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文献詳細

雑誌文献

精神医学51巻7号

2009年07月発行

特集 精神疾患と睡眠マネージメント―最新の知見

Sleep Psychiatryを考える

著者: 井上雄一123 飯森眞喜雄3

所属機関: 1財団法人神経研究所付属睡眠学センター 2東京医科大学睡眠学講座 3東京医科大学精神医学講座

ページ範囲:P.623 - P.623

文献概要

 1960~70年代においては,うつ病のレム潜時短縮仮説と,統合失調症の幻覚がレム睡眠構造の覚醒状態への侵入(intrusion)であるとの仮説が重要視され,精神疾患での睡眠研究の花形であった。しかし,前者は,これを説明する傍証が得られず(現在でも中枢コリン系機能の感受性亢進との関係で論じられることがあるが),かつうつ病態の中核的な部分を説明できないこと,後者は肯定的な所見が多くは得られなかったことから,1980年代以降は研究の前線から姿を消した。その後には,かつてのような精神科主導ではなく,より総合的な睡眠障害研究が進められ,精神疾患での睡眠障害は,頻度は高いが非特異的な存在としてあまり重視されなくなっていた。

 しかし,睡眠障害国際診断分類第2版((ICSD 2nd)2005年出版)による疾病概念整理の時期と前後して,特に慢性不眠がうつ病の重要な発症もしくは再発リスク要因になること,代表的な内科系睡眠障害である睡眠時無呼吸症候群がうつ病と因果関係が深いことが,主に疫学的な検討により明らかにされた。また,新世代抗精神病薬での睡眠改善効果とその臨床上の意義が明確化されたこと,睡眠時に限局したパニック発作の存在が注目されるようになったこと,認知症性疾患の中で重要な位置を占めるレビー小体病が,発症初期からレム睡眠時に異常行動を呈することが明らかになったことなども,精神疾患研究における睡眠生理学研究の重要性を再認識させるきっかけとなっているし,精神疾患治療薬使用による睡眠中の意識障害下での異常行動も,司法睡眠医学領域での課題となっている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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