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文献詳細

雑誌文献

精神医学51巻7号

2009年07月発行

文献概要

「精神医学」への手紙

塩酸ドネペジル服用患者に診られる白髪の黒髪化現象

著者: 堀口淳1

所属機関: 1島根大学医学部精神医学講座

ページ範囲:P.696 - P.696

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 写真(図)の症例は,当科で治療中の86歳の女性アルツハイマー病患者である。2007年8月31日から塩酸ドネペジル(3mg/日)の試用開始後,同薬5mg/日のみを継続投与し,この間,他医からトリクロルメチアジド,塩酸ニカルジピン,シンバスタチン,バッファリン®が併用投与されている。家族が本人の白髪の黒髪化に気づいたのは2008年の春頃である。筆者は他の女性アルツハイマー病2例でも,同現象を確認している。

 塩酸ドネペジルはコリンエステレースの阻害薬である。アセチルコリン類似作用3)とコリンエステレースに対する抵抗性2)を有する薬物4)が,育毛や発毛促進,白斑用剤の主成分として商品応用されている3)。アセチルコリンの局所血管拡張作用や円形脱毛症の治療効果についてもすでに報告1)されている。筆者にはこれらの報告と今回の所見との関連を考察する能力はないが,アルツハイマー病研究の発展に寄与すれば幸いである。

参考文献

1) 注射用塩化アセチルコリン,オビソート(R)注射用,医療用医薬品添付文書.第一製薬株式会社,1985
2) 岩間勝広,小林邦久,早川近一,他:Methyl N-trimethyl-γ-aminobutyrate chlorideの皮膚浸透性とコリンエステラーゼ抵抗性について.日生理誌 28(2):54-58, 1966
3) 岩田圭司,山口和政,清水雅良,他:塩化カルプロニウムのウサギ耳介血流量に及ぼす影響.KISO TO RINSHO 31:3217-3220, 1997
4) 武田克之,松本篤,島田光義:MTB(methyl N-trimethyl-γ-aminobutyrate chloride)の皮膚科的応用と実験的検討.皮膚と泌尿 28:719-732,1966

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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