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文献詳細

雑誌文献

精神医学51巻8号

2009年08月発行

文献概要

短報

視覚変容は,抗精神病薬の副作用でも生じ得る

著者: 森山泰1 村松太郎2 加藤元一郎2 三村將3 鹿島晴雄2

所属機関: 1陽和病院精神科 2慶應義塾大学医学部精神神経科 3昭和大学医学部精神神経科

ページ範囲:P.785 - P.788

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はじめに

 近年双極性障害における抗うつ薬の使用に関して,薬物による躁転のリスク以外に,双極性うつ病に対する気分安定薬服用中の抗うつ薬の有効性はプラセボと同程度である6)といった報告がある。そうした中,双極性障害に対する非定型精神病薬の躁病相,うつ病相,維持療法における有効性が報告8)されており,近年双極性障害に対する同薬の選択機会が増加している。一方で,気分障害では抗精神病薬による錐体外路症状が統合失調症より出現しやすいとされ3),副作用には注意する必要がある。

 ところで,これまで,抗精神病薬による運動系の副作用に比べて,知覚系の副作用はあまり報告されてこなかった。今回我々は双極性Ⅱ型に同薬の知覚系の副作用である視覚変容を伴い,同薬を中止することで改善した1例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。

参考文献

1) Benazzi F:Depression with DSM-Ⅳ atypical features:A marker for bipolar Ⅱ disorder. Eur Arch Psychiatry Clin Neurosci 250:53-55, 2000
2) Conrad K著,山口直彦,安克昌,中井久夫 訳:分裂病のはじまり.岩崎学術出版社,1994
3) Gao K, Kemp DE, Ganocy SJ, et al:Antipsychotic-induced extrapyramidal side effects in bipolar disorder and schizophrenia:A systematic review. J Clin Psychopharmacol 28:203-209, 2008
4) 柿本泰男,和氣現人,山田泰司,他:統合失調症にみられる視覚変容.精神医学 50:717-719,2008
5) Papakostas GI, Shelton RC, Smith J, et al:Augmentation of antidepressants with atypical antipsychotic medications for treatment-resistant major depressive disorder:A meta-analysis. J Clin Psychiatry 68:826-831, 2007
6) Sachs GS, Nierenberg AA, Calabrese JR, et al:Effectiveness of adjunctive antidepressant treatment for bipolar depression. N Engl J Med 356:1711-1722, 2007
7) 坪井貴嗣:2)神経症状:②錐体外路症状―(3)Meige症候群.精神科治療学 22(増刊号):44-45,2007
8) 堤祐一郎:非定型抗精神病薬は気分安定薬になりうるか? 臨精医 37,919-930,2008
9) 内田裕之:知覚変容発作に関する研究:抗精神病薬の副作用とする立場から.慶應医学 83:23-32,2006
10) 内海健:うつ病新時代―双極性Ⅱ型障害という病.勉誠出版,2006
11) 山口直彦:分裂病者の訴える知覚変容を主とする“発作”症状について.精神科治療学 1:117-125,1986

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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