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雑誌詳細

文献概要

私のカルテから

摂食障害者の食物万引きの1例

著者: 袖長光知穂12

所属機関: 1聖マリアンナ医科大学神経精神科 2研精会山田病院

ページ範囲:P.803 - P.805

 神経性食思不振症(思春期やせ症)の重症者による食料品の万引き窃盗について,被告人の是非弁識能力を認めながらも,食行動に関する限り,その行動制御能力を完全に失っていたとして,心神耗弱とした原判決を破棄し,心神喪失と認定した事例〔大阪高裁昭59・3・27判決,窃盗,(昭58(う)十三),破棄自判(無罪)〕がある。

 この事例に関して,岡田2)は,鑑定人の考え方にその時代の医療思想が反映された結果,各種依存を病理的行動様式として治療対象とする傾向が法的判断に持ち込まれたもの,西山1)は,不可知論において完全責任能力と判断されてきた器質的疾病のない精神病質者・神経症者にも深刻な精神的崩壊を認めざるを得ない場合とみなして,精神科医の主張を裁判所が認めた判決として紹介している。

 起訴前簡易鑑定で食料品の万引きを繰り返した摂食障害患者の診察を行う機会があり,その中で摂食障害に合併するパーソナリティ障害と万引きの関連が推測された症例があったので,責任能力との関連を中心に報告する。

参考文献

1) 西山詮:Ⅱ.責任能力の精神医学的基礎.松下正明 編.臨床精神医学講座19 司法精神医学・精神鑑定.中山書店,2000
2) 岡田幸之:Ⅲ.精神鑑定の現状と問題点.松下正明 編.臨床精神医学講座19 司法精神医学・精神鑑定.中山書店,2000

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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