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巻頭言
児童青年精神医学の現状
著者: 市川宏伸12
所属機関: 1東京都立梅ヶ丘病院 2日本児童青年精神医学会
ページ範囲:P.830 - P.831
文献購入ページに移動 かつては,「児童青年精神科の勉強をしたい」と思っても,希望者も少ないようで,「どこへ行けばよいのかわからない」状況であった。私も自閉症に興味を持って,約30年前に医学部を卒業して,都内のいくつかの小児科の医局を訪れた。「自閉症はやってないな。精神科に行けば」と言われて精神科講座に入局したが,「今年は子どもに興味を持つ奇特な人がいる」という噂が流れてきた。医局長から「子どもだけやってても食べられないから,まず大人の精神科を勉強するように」と言われた。約3年間成人の精神科医療を勉強して,統合失調症を中心とした診断・治療を勉強できたことは,その後の児童青年精神科の医療に大いに役立った。「統合失調症とされながら,典型例とはいえない例がある」,「よく聞くと10代に一時的な精神科的エピソードを持つ統合失調症者がいる」,「10代に発症した統合失調症者が一応社会復帰しても,20代後半になって再発すると治療が困難である」ことなどを勉強した。当時は,私が子どもに興味を持っていることを知る先輩から「大人の精神科がわかれば子どもはわかるんだよ」と諭された(?)のを覚えている。最近は精神科を志望するレジデントの中に「児童精神科の勉強をしたい」と考える医師は増えているし,小児科医の中にも希望者は増加している。しかしながら,30年前と状況は大きく変わっていないように思われる。このような状態について考えてみたい。
長らく大学の精神科に専門講座を作ることで児童青年精神科医療の普及構想が図られてきた。しかし島薗学術会議勧告にもかかわらず,現在まで医学部の中に児童精神科専門講座はできていない。いくつかの大学にある講座は他学部との協力講座であったり,時限講座であり,専門の入院病棟による治療は難しく,結果として専門性ある医師の養成は十分ではない。これに代わってその役割を担っているのは,全国児童青年精神科医療施設協議会(全児協)加盟の医療施設である。
長らく大学の精神科に専門講座を作ることで児童青年精神科医療の普及構想が図られてきた。しかし島薗学術会議勧告にもかかわらず,現在まで医学部の中に児童精神科専門講座はできていない。いくつかの大学にある講座は他学部との協力講座であったり,時限講座であり,専門の入院病棟による治療は難しく,結果として専門性ある医師の養成は十分ではない。これに代わってその役割を担っているのは,全国児童青年精神科医療施設協議会(全児協)加盟の医療施設である。
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