文献詳細
文献概要
--------------------
編集後記 フリーアクセス
著者:
所属機関:
ページ範囲:P.932 - P.932
文献購入ページに移動本号の「巻頭言」では歴史の流れを踏まえて,本邦における児童青年精神医学の厳しい現状と展望が述べられている。ところで,精神病の早期介入を推進しようとすると,まさに児童青年精神医学が抱えてきたものと類似の問題に突き当たる。先端医療は実績が目に見えて評価もしやすく国家的な支援を受けやすいが,精神医療は成果が得られるまでに10年,20年という単位で時間がかかり,その評価も難しい。たとえば,初回精神病エピソードの症状と機能の転帰に関与する要因には,病前適応,認知機能,併存疾患,治療アドヒアランス,治療の質と構造,精神症状の未治療期間などが知られており,早期介入の治療成績を評価するだけでも,これらの要因をすべて取り込み,大規模で前方視的な疫学コホート研究が要求される。児童青年期の問題は,児童を専門としない精神科医にとっても重大関心事であるが,本邦の現状を知ると精神科医ですらこうした早期介入の流れに懐疑的になってしまうようである。“超法規的”な政治判断が求められる領域なのだろう。超少子化の折,若者のメンタルヘルスを等閑にすることは国家存亡にかかわるという指摘は深刻に受け止めたい。
掲載誌情報