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研究と報告
認知療法的かかわりにより腹部症状の緩解維持効果が得られた,うつ病を併発した潰瘍性大腸炎の1症例
著者: 稲垣貴彦1 森田幸代1 大川匡子1 辻川知之2 山田尚登1
所属機関: 1滋賀医科大学精神医学講座 2滋賀医科大学消化器内科学講座
ページ範囲:P.27 - P.32
文献購入ページに移動潰瘍性大腸炎は大腸粘膜の炎症性疾患であるが,粘膜障害の重症度と臨床症状の重症度との間にかい離がみられる場合があり,心理社会的ストレスへの曝露や人格の偏りが臨床症状の重症度や再燃に関与すると考えられている。
我々は,潰瘍性大腸炎の緩解と再燃を繰り返した後に大うつ病性障害を合併し,認知療法を試みたところ,潰瘍性大腸炎の消化器症状の緩解期間の延長が得られた症例を経験した。粘膜病変には変化がないにもかかわらず,それまで再燃を繰り返していた潰瘍性大腸炎が緩解状態を維持していたことから,認知療法的かかわりが潰瘍性大腸炎の消化器症状に対し軽減効果を示したと考えられる。
潰瘍性大腸炎は,併存する精神疾患に対してだけではなく,その身体症状に対しても精神科医が多分に治療的関与するべき疾患であると考えられたので報告する。
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