文献詳細
特集 高次脳機能障害をめぐって
高次脳機能障害の行動の障害
著者: 勝屋朗子1 一美奈緒子1 本田和揮1 橋本衛1 池田学1
所属機関: 1熊本大学大学院生命科学研究部脳機能病態学分野(神経精神科)
ページ範囲:P.989 - P.994
文献概要
高次脳機能障害者に生じ得る問題の1つに「社会的行動障害」が挙げられる。社会的行動障害とは,感情や行動を自分で調整することが難しくなる状態のことであり,「記憶障害」,「注意障害」,「遂行機能障害」とならんで高次脳機能障害の主要症状の1つとされる。高次脳機能障害支援の手引きには,社会的行動障害の内容として,意欲・発動性の低下,情動コントロールの障害,対人関係の障害,依存的行動,固執が列挙されている。しかしながら,高次脳機能障害における他の3つの主要症状と比較して,社会的行動障害は客観的な評価が難しく,その頻度や程度について正確に把握できていないのが現状である。また,感情コントロールが困難で易怒的になったり,あるいは逆に,意欲が低下し無関心になったりするため,十分な介入ができず,日常生活や社会復帰の大きな障壁となることも少なくない。
本稿では,高次脳機能障害における社会的行動障害について,現在使用されている評価法や治療法について概観するとともに,当院における症状の出現頻度について報告する。さらに,易怒性や意欲の低下など,特徴に応じた症例を呈示し,当院で取り組みを開始したアンガー・マネジメント・プログラムについて紹介する。
参考文献
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