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文献詳細

雑誌文献

精神医学52巻10号

2010年10月発行

文献概要

研究と報告

断酒率に影響した家族学習プログラムの効果の解析

著者: 奥田正英1 大草英文1 田中雅博1 三和啓二1 水谷浩明1

所属機関: 1八事病院精神科

ページ範囲:P.1005 - P.1011

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抄録

 筆者らは,アルコール依存症社会復帰プログラム(ARP)の有用性,および家族のどのような要因が酒害者の断酒に好結果を及ぼすのか,家族学習会導入前と導入後で検討した。その結果,①1年断酒率は31.1%から46.1%に有意に改善した。②単身者の1年断酒率は,今回の平均断酒率の約1/5であった。③1年断酒達成者の協力者数は,単数でも複数でも差がなかった。④協力者は,配偶者のほうが肉親などに比べ1年断酒率が約2倍高かった。⑤1年断酒達成者の協力者の発言回数は,非断酒者のそれより有意に多かった。

 以上の結果から,ARPでは協力者の積極的な関与が必要であり,家族にも心理社会的な教育が必要であることが明らかになった。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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