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文献詳細

雑誌文献

精神医学52巻11号

2010年11月発行

短報

抗精神病薬の長期使用による水中毒3症例の治療の試み―キンドリングの視点から(第2報)

著者: 柿本泰男1

所属機関: 1財団法人創精会松山記念病院

ページ範囲:P.1103 - P.1106

文献概要

はじめに

 多飲水は抗精神病薬を長期使用中の患者にしばしばみられ1),しかも治療困難な副作用である。その機序はいまだ不明であるが,柿本と山本3)はその現象が,何年かにわたる多量の飲水行動が習慣的に固定し,発作的に頻発するようになるのではないかと考えた。その機序をキンドリングに似た現象と考えた。飲水量が特に多いとき,著しい低Na血症となり,意識障害,浮腫,けいれんなどが起こり,水中毒とよばれる。柿本と山本3)は多飲水を繰り返す患者1例に,キンドリング現象に有効とされるcarbamazepine(CBZ)を投与し,多飲水発作の抑制に有効であることを見いだし,報告した。1例の患者での試みでは,一般的に多飲水にCBZが有効であると結論づけることはできない。本論文では,先に報告した症例のその後の経過と,その後新たに開始した2症例の治療結果について報告する。いずれの症例でも,繰り返す多飲水にCBZが有効であることを認めた。

参考文献

1) de Leon J Verghose C, Tracy JI, et al:Polydipsia and water intoxication in psychiatric patients:A review of the epidemiological literature. Biol Psychiatry 35:408-419, 1994
2) Goddard GV:Development of epileptic seizures through brain stimulation at low intensity. Nature 214:1020-1021, 1967
3) 柿本泰男,山本由紀:多飲水と水中毒とを頻回に繰り返す症例―キンドリングの視点から見た治療.精神医学 51:917-920,2009
4) Post RM:Sensitization and kindling perspectives for the course of affective illness:Toward a new treatment with anticonvulsant carbamazepine. Pharmacopsychiatry 23:3-17, 1990
5) 佐藤光源,松本和紀:覚せい剤依存と関連精神障害 B症状 経過,診断.佐藤光源,松本和紀 編,臨床精神医学講座8 薬物・アルコール関連障害.中山書店,pp222-235,1999

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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