icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学52巻11号

2010年11月発行

文献概要

短報

拘禁精神病と考えられた1症例

著者: 加藤悦史12 杉浦明夫1 河田晃1 兼本浩祐2

所属機関: 1岡崎医療刑務所 2愛知医科大学精神科学講座

ページ範囲:P.1111 - P.1113

文献購入ページに移動
はじめに

 刑務所における拘禁反応にはさまざまなものがあり,19世紀半ばから主にドイツで研究が行われてきた。わが国でも戦前,戦中,戦後にかけて報告が行われ,吉益12),小木7)らいくつかの分類がある。しかしながら,DSM-ⅣやICD-10の診断分類には拘禁反応という用語はなく,最近では拘禁反応の概念自体あまり用いられない。そのため,報告例もまれである。しかし,矯正医療の現場では拘禁反応と考えられる症例は確かに存在し,その病名も使われ続けている。拘禁反応の中でも重度の精神障害に至る場合には拘禁精神病と呼ばれる1)が,今回我々は,Birnbaum2)の妄想様構想や小木7)の逃避的妄想の1つと考えられる独特の拘禁精神病を観察したので報告する。なお,症例の匿名性を保つため,論旨に影響のない範囲で改変を施し,症例報告に際し文書にて本人の同意を得ている。

参考文献

1) 阿部惠一郎:拘禁反応.松下正明 編,司法精神医学2 刑事事件と精神鑑定.中山書店,pp 240-248,2006
2) Birnbaum K:Psychosen mit Wahnbildung und wahnhafte Einbildungen bei Degenerativen. C. Marhold, Halle, 1908
3) Birnbaum K:Kriminalpsychopathologie und psychobiologische Verbrecherkunde. Springer, Berlin, 1931
4) Bleuler E:Dementia praecox oder Gruppe der Schizophrenien. Leipizig und Wien, Franz Deuticke, 1911
5) Föersterling W:Üeber die paranoiden Reaktionen in der Haft. Abh. Neur. Psychiatr. Psychol, Heft 19. S. Karger, Berlin, 1923
6) 保木正和,藤藪賢治,工藤弘人,他:CAPAS能力検査Ⅰ・Ⅱの再検討.中央研究所紀要13:101-111,2003
7) 小木貞孝:拘禁状況の精神病理.井村恒郎,懸田克躬,島崎敏樹,他 編,異常心理学講座第Ⅴ巻.みすず書房,pp 279-347,1965
8) 中田修:未決拘禁に於ける精神病に就いて.矯正医学 1:13-20,1952
9) Nemiah JC:Conversion disorder(hysterical neurosis, conversion type). In:Kaplan HI, ed. Comprehensive Textbook of Psychiatry Third edition, Williams & Wilkins, Baltimore, pp 1528-1538, 1980
10) 野村章恒:心因性精神病,殊ニ拘禁性精神病ニ関スル臨床的知見.精神経誌 41:121-189,1937
11) 吉益脩夫:受刑者ノ精神病.殊ニ心因性反応ニ就イテ.精神経誌 41:457-458,1937
12) 吉益脩夫:拘禁性異常反応.犯罪誌 28:185-191,1962

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?