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中学生における自傷行為の経験率―単一市内における全数調査から
著者: 岡田涼12 谷伊織3 大西将史3 中島俊思3 宮地泰士4 藤田知加子3 望月直人3 大西彩子5 松岡弥玲3 辻井正次2
所属機関: 1日本障害者リハビリテーション協会 2中京大学現代社会学部 3浜松医科大学子どものこころの発達研究センター 4名古屋市あけぼの学園 5甲南大学文学部
ページ範囲:P.1209 - P.1212
文献購入ページに移動近年,若者の自傷行為の問題に関心が寄せられている。自傷行為とは,「自殺の意図なしに,自ら故意かつ直接的に,自分自身の身体に対して損傷を加えること」である7)。一般に,自傷行為は希死念慮を伴わないものの,エスカレートするうちに,自殺の意図を持たずに重篤で致命的な自傷行為に至る可能性も指摘されており3),自傷行為の実態把握やその対応が重要課題となっている。
いくつかの研究で,日本の若者における自傷行為の経験率が明らかにされている。これまで,一般大学生の6.9%11),一般女子高校生の14.3%10),少年鑑別所入所中男子の39.9%5)が自傷行為を経験していることが報告されている。自傷行為の初発時期は,12歳前後の中学入学期に多いことが指摘されているため1),予防や早期対応を考えるうえで,中学生における自傷行為の実態把握が重要であると考えられる。Izutsuら2)は,中学生を対象に自傷行為の経験率を調べている。刃物で自身を切る自傷については,男子の8.0%,女子の9.3%が経験しており,身体を壁に打ち付ける自傷については,男子の27.7%,女子の12.2%が経験していることが示された。しかし,Izutsuらの研究では,単一の中学校のみで調査が行われており,結果の一般化という点で限界がある。また,日本で一般の中学生を対象に自傷行為の経験率を調べた研究は,他にはみられない。現代の中学生における自傷行為の経験率を把握するためには,ある程度の代表性を備えた大規模なサンプルを用いて調査を行うことが必要である。
本研究では,単一市内を対象とした全数調査を行い,中学生の自傷行為に関する基礎データを得ることを目的とした。
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