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雑誌詳細

文献概要

特集 総合病院精神科衰退の危機と総合病院精神医学会の果たすべき役割

有床総合病院精神科の危機と課題

著者: 吉本博昭1

所属機関: 1富山市民病院精神科

ページ範囲:P.221 - P.228

はじめに

 2007年頃より医療崩壊という用語がマスコミで取り上げられるようになった。この医療崩壊は主に急性期医療を中心に,いわゆる総合病院を中心に地方から都会へとその現象が広がっている。その原因は多要因であり,今も解決を見ていない。現在は,産科・小児科領域が中心に取り上げられることが多く,国の対策もこの領域にフォーカスが当てられているが,(旧)総合病院精神科(以下,総合病院精神科)もこの医療崩壊という潮流に巻き込まれ苦しんでいることは国民には知られていない。

 そこで,総合病院精神科の中でも病床を有している有床総合病院精神科(以下,有床)については,危機的状況に陥っているさまをデータや具体的な地域の実情も提示しながら示したい。そのうえで,有床の役割・機能がどのようなものであるか,根幹をなす国の精神保健福祉施策の問題を諸外国の例も示しながら,今後の課題とともに未来に向かってあるべき姿も語りたい。

 ここで総合病院と呼称する際は,日本総合病院精神医学会より「総合病院精神科の現状とめざすべき将来―総合病院精神科のネクストステップ2009」4)(以後,ネクストステップ2009)において提示されている,「内科・外科を含む複数の診療科を有し,主として二次救急を含む急性期医療を提供する病院」としているのに従う。また,有床総合病院精神科とは,精神病床を有し,精神科入院治療を提供できる施設としたい。

参考文献

1) 「病院経営の現況調査」報告:日本病院団体協議会,平成19年10月,2007
2) 藤井明人:釧路における精神科地域医療の現状.総病精医 18:61,2006
3) 瀬戸屋雄太郎:オーストラリアおよび近隣諸国における精神保健システム.平成18年度厚生労働科学研究費補助金障害保健福祉総合研究推進事業報告書,2007
4) 総合病院精神科の現状とめざすべき将来―総合病院精神科のネクストステップ2009:総合病院精神医学(別冊).2009
5) 吉本博昭:総合病院精神科の果たす役割―我々は総合病院の病床減少を看過して良いのか? 北陸神精医誌 22:1-8,2008
6) 吉本博昭:有床総合病院精神科委員会報告.総病精医 20:213,2008
7) 吉本博昭:総合病院精神科は病床削減により,生き残れるか―富山市民病院による各種の取り組みと苦悩.精神経誌 110:1072-1076,2008

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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