精神医学52巻3号

2010年03月発行

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研究と報告

医療観察法鑑定の現状と問題点―都立松沢病院への鑑定入院20例の検討

著者： 今井淳司¹ 黒田治¹ 田口寿子¹ 伊澤良介¹ 梅津寛¹ 分島徹¹ 岡崎祐士¹

所属機関： ¹東京都立松沢病院精神科

ページ範囲：P.275 - P.284

抄録

　医療観察法鑑定のために都立松沢病院へ入院した医療観察法鑑定20例について，調査と鑑定医に対するアンケートを行い，医療観察法鑑定の問題点について検討した。問題点として，①治療・行動制限に関する問題，②身体合併症に関する問題，③裁判所との連携に関する問題，④医療観察法鑑定の入口の問題，⑤3つの評価軸に対する認識の問題，⑥不処遇・却下事例に関する問題が抽出された。これらの問題点を改善するためには，①法条文やガイドラインの整備，②鑑定センターの設立や鑑定入院医療機関の施設基準の向上，③医療観察法に携わる司法関係者や鑑定医の知識・能力の向上の機会の充実，④早急な指定入院医療機関の整備，場合によっては病床の増設，⑤不処遇事例に対する法的整備などが必要と思われた。

参考文献

1) 平田豊明：医療観察法に関わる鑑定と法運用の問題点―事例を通して．精神経誌 110：43-48, 2008

2) 平林直次，佐藤真由美，永田貴子，他：医療観察法指定入院医療機関の実態調査と今後のあり方に関するアンケート調査(主任研究者：山上皓)，厚生労働科学研究費補助金(こころの健康科学事業)「他害行為を行った精神障害者の診断，治療および社会復帰に関する研究」総括・分担研究報告書．pp130-154, 2009

3) 五十嵐禎人：医療観察法におけるリスク評価．臨精医 38：571-575, 2009

4) 五十嵐禎人：医療観察法の現状と今後の課題．司法精神医学 4：40-50, 2009

5) 井原裕：精神鑑定における精神科医―39条の謙抑と情状の考慮．司法精神医学 3：93-100, 2008

6) 池原毅和：医療観察法施行一年で現れてきた問題点．病・地域精医 50：134-135, 2008

7) 厚生労働省：医療観察法にかかる申立等の状況(施行～平成21年3月1日までの状況)(http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/sinsin/kettei.html)

8) 松下正明：医療観察法における医療安全管理―特に鑑定入院について．精神医学 47：934-937, 2005

9) 水木泰：医療観察法鑑定における鑑定入院の問題点―公的鑑定入院医療機関の立場から．日精協誌 25：29-38, 2006

10) 水留正留：医療観察法と刑事司法．臨精医 38：523-528, 2009

11) 村上優：医療観察法における鑑定入院について．日精協誌 24：18-23, 2005

12) 村上優：医療必要性の鑑定．松下正明，山内俊雄，山上皓 編，司法精神医学 5．司法精神医療．中山書店，pp155-163, 2008

13) 中島直：法案の問題点は予測問題だけではない．精神経誌 105：1427-1430, 2003

14) 中島直：医療観察法の問題点―判断が揺れた人格障害の事例を通じて．精神経誌 110：32-37, 2008

15) 最高裁判所事務総局：「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」及び「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律による審判手続き等に関する規則」の解説．平成17年3月刑事裁判資料第284号，2005

16) 斉藤雅：医療観察法をめぐって―鑑定入院医療機関として．病・地域精医 50：130-133, 2008

17) 下村義之，吉田大輔，坪井隆人：医療観察法施行後2年の処遇事件の処理状況について．判タ 59：19-24, 2008

18) 白澤英勝，斉藤雅，池原毅和，他：医療観察法をめぐって―鑑定入院を中心に．病・地域精医 50：136-144, 2008

19) 田口寿子：「『この法律による医療』の必要性」とその評価．臨精医 38：563-570, 2009

20) 山上皓：医療観察法の現状と課題―司法精神医学者の視点から．精神医学 50：1044-1048, 2008

21) 山本輝之：心神喪失者医療観察法における強制処遇の正当化根拠と「医療の必要性」について―最高裁平成19年7月25日決定を契機として．中谷陽二，丸山昌夫，山本輝之 編，精神科医療と法．弘文堂，pp125-144, 2008

22) 吉川和男：「医療必要性」の判定基準と鑑定のあり方．臨精医 35：251-257, 2006

23) 吉川和男：医療観察法の見直しに向けて―国立精神・神経センター司法精神医学研究部の立場から．精神医学 50：1059-1061, 2008