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「第28回日本認知症学会」印象記
著者: 井上輝彦1
所属機関: 1八日会大悟病院老年期精神疾患センター
ページ範囲:P.412 - P.413
文献購入ページに移動初日は“タウ研究にルネッサンスはあるか?”と題されたシンポジウムが組まれていた。これまでアミロイドβ蛋白(Aβ)が,神経細胞内のタウ蛋白の異常リン酸化・異常凝集を促進し,神経原線維変化が形成され,ついには神経細胞死,そしてアルツハイマー型認知症(AD)が発症すると考えられてきた。いわゆるアミロイド・カスケード仮説であるが,本シンポジウムは,これに修正を加えるものであった。この仮説に基づいてAβに対する受動ワクチン療法が試されたが,その長期フォローの結果,Aβは完全に除去できたが認知症の進行・タウの蓄積にはなんら効果はなかった。要するに,AβのみではADの発症・進行を説明することはできないことが示唆された。さらに,タウ蓄積の最終構造物である神経原線維変化が,必ずしも神経細胞障害に働いていないことが神経病理学的にも示され,むしろ,可溶性タウオリゴマーによるシナプス障害や顆粒状タウオリゴマーによる神経細胞死がADの発生病理に重要であることが報告された。タウの画像化に関する研究は現在進行中であり,今後,タウの異常凝集を標的とした治療法の開発に期待される。
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