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文献詳細

雑誌文献

精神医学52巻7号

2010年07月発行

文献概要

短報

集中内観における共感の変化―Interpersonal reactivity indexを用いて

著者: 古市厚志1 長島正博2 長島美稚子2 角田雅彦1 鈴木道雄1

所属機関: 1富山大学大学院医学薬学研究部神経精神医学講座 2北陸内観研修所

ページ範囲:P.679 - P.682

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はじめに

 集中内観は,自己と他者との関係性を回想することで自己洞察へと導く日本独自の心理的技法である。近親者に対して,「してもらったこと」「して返したこと」「迷惑をかけたこと」(これを内観3項目という)の具体的事実を幼少期から年代順に回想する。この内観独自の回想過程において,他者視点が獲得され,自己中心性が軽減するといわれる6)。内観後には他者配慮的な行動が増え,社会性が改善されることを示唆する報告が多い7,8,12)が,その背景として,視点の変化を促す心理的介入によって個人の共感性が変化していることが推測される。

 共感の概念は認知的側面と感情的側面の2つの領域からなると考えられている2)が,この両側面のどちらに重点を置くかによって,これまでさまざまな評価尺度が考案されてきた。Davis1)は,共感をより広義にとらえる組織的モデルを提唱している。つまり,他者を観察するときに,観察者が認知的,感情的,また行動的な反応に至る一連のエピソードとしてとらえる。こうした考えから,Davisは共感を多次元的に測定できる尺度,interpersonal reactivity index(IRI)を開発した。

 我々は,IRIを用いて集中内観前後の共感の変化を調べたので,若干の考察を加えて報告する。

参考文献

1) Davis MH:Measuring individual differences in empathy:Evidence for multidimensional approach. J Pers Soc Psychol 44:113-126, 1983
2) Davis MH:Empathy:A social psychological approach. Brown & Benchmark, Madison, 1994(菊池章夫 訳:共感の社会心理学.川島書店,pp11-14,1999)
3) Goldberg DP, Williams P:A user's guide to the General Health Questionnaire. NFER-NELSON, London, 1988
4) Goldberg DP, Gater R, Sartorius N, et al:The Validity of Two Version of the GHQ in the WHO study of mental illness in general health care. Psychol Med 27:191-197, 1997
5) 稲永和豊,服部信行,Leuers TRS,他:集中内観の治療効果について―精神的健康度と不安との関連から.内観医学 2:19-26,2000
6) 川原隆造:内観療法―関係性の回想法.精神医学 45:431-457,2004
7) 三木善彦:離婚寸前の夫婦.三木善彦,真栄城輝明,竹元隆洋 編,内観療法.ミネルヴァ書房,pp174-181,2007
8) 村上彰美:小学生におけるH・R内観の効用.日本内観学会大会発表論文集 18:48-51,1995
9) 長島正博:内観法の立場から.内観研究 10:43-49,2004
10) 西田憲正:シンポジウム―経営と内観.日本内観学会発表論文集 12:123-137,1989
11) 桜井茂男:大学生における共感と援助行動の関係―多次元共感性尺度を用いて.奈良教育大学紀要 37:149-153,1988
12) 山本治雄:矯正施設における内観の効果.奥村二吉,佐藤幸治,山本治雄 編,内観療法.医学書院,pp119-121,1972

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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