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短報
集中内観における共感の変化―Interpersonal reactivity indexを用いて
著者: 古市厚志1 長島正博2 長島美稚子2 角田雅彦1 鈴木道雄1
所属機関: 1富山大学大学院医学薬学研究部神経精神医学講座 2北陸内観研修所
ページ範囲:P.679 - P.682
文献購入ページに移動集中内観は,自己と他者との関係性を回想することで自己洞察へと導く日本独自の心理的技法である。近親者に対して,「してもらったこと」「して返したこと」「迷惑をかけたこと」(これを内観3項目という)の具体的事実を幼少期から年代順に回想する。この内観独自の回想過程において,他者視点が獲得され,自己中心性が軽減するといわれる6)。内観後には他者配慮的な行動が増え,社会性が改善されることを示唆する報告が多い7,8,12)が,その背景として,視点の変化を促す心理的介入によって個人の共感性が変化していることが推測される。
共感の概念は認知的側面と感情的側面の2つの領域からなると考えられている2)が,この両側面のどちらに重点を置くかによって,これまでさまざまな評価尺度が考案されてきた。Davis1)は,共感をより広義にとらえる組織的モデルを提唱している。つまり,他者を観察するときに,観察者が認知的,感情的,また行動的な反応に至る一連のエピソードとしてとらえる。こうした考えから,Davisは共感を多次元的に測定できる尺度,interpersonal reactivity index(IRI)を開発した。
我々は,IRIを用いて集中内観前後の共感の変化を調べたので,若干の考察を加えて報告する。
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