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文献概要

研究と報告

メランコリー型の意義再考―症例を通して

著者: 杉山通1 津田均23

所属機関: 1松蔭病院 2名古屋大学学生相談総合センター 3名古屋大学大学院医学系研究科精神健康医学

ページ範囲:P.757 - P.763

抄録

 メランコリー型(Tellenbach H)は本邦において典型的なうつ病の病前性格として重視されてきたが,近年は回避的,自己愛的,あるいは軽躁的要素が混じたうつ病群の増加とともにその位置が相対的なものになりつつある。しかし,非メランコリー型に見えるうつ病にもメランコリー型と共通する要素が見いだされることは少なくない。本稿では,症例の検討を通じてメランコリー型を構成する要素を再検討し,多様化するうつ病を統一的に理解する視点を探ってみたい。メランコリー型は秩序志向性を基本的な特徴とするが,その底には環境の変化に対する脆弱性と対象との一体化願望が存在する。これらの特徴には,循環性格(Kretschmer E)の素因が関与していると考えられる。

参考文献

1) 阿部隆明,大塚公一郎,永野満,他:「未熟型うつ病」の臨床精神病理学的検討.臨精病理 16:239-248,1995
2) Akiskal HS, Mallya G:Criteria for the "soft" bipolar spectrum:Treatment implications. Psychopharmacol Bull 23:68-73, 1987
3) American Psychiatric Association:DSM-Ⅳ Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders. Washington D.C., 1994
4) 土居健郎:うつ病の精神力学.精神医学 8:978-981,1966
5) 広瀬徹也:逃避型抑うつについて.宮本忠雄 編,躁うつ病の精神病理2.弘文堂,pp61-86,1977
6) 飯田眞:メランコリー型の発達史論―うつ病双生児の不一致症例.飯田眞 編,躁うつ病の精神病理3.弘文堂,pp1-19,1979
7) 笠原嘉:うつ病の病前性格について.笠原嘉 編,躁うつ病の精神病理1.弘文堂,pp1-29, 1976
8) Kretschmer E:Medizinische Psychologie. Zehnte, verbesserte und vermehrte Auflage. Georg Thieme, Stuttgart, 1950(西丸四方,高橋義夫 訳:医学的心理学.みすず書房,1955)
9) 松浪克文,上瀬大樹:現代型うつ病.精神療法 32:308-317,2006
10) 杉山通:復職に至った回避的なうつ病の1症例.精神経誌 111:3-9,2009
11) 樽見伸:現代型社会が生む“ディスチミア親和型”.臨精医 34:687-694,2005
12) Taylor MA, Fink M:Melancholia. Cambridge University Press, New York, 2006
13) Tellenbach H:Melancholie. Vierte Erweiterte Auflage. Springer, Berlin, 1983(木村敏 訳:メランコリー.みすず書房,1985)
14) 津田均:うつとパーソナリティ.精神経誌 107:1268-1285,2005

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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