文献詳細
短報
催幻覚成分を含む植物由来物質,アヤワスカ(Ayahuasca)の単回使用により精神病症状の再燃を来した中毒精神病の1例
著者: 江崎真我12 梅野充13 五味渕隆志4
所属機関: 1東京都立松沢病院精神科 2幸有会記念病院精神科 3筑波大学大学院人間総合科学研究科 4青木病院精神科
ページ範囲:P.797 - P.800
文献概要
アヤワスカ(Ayahuasca)は,ワスカ(Hoasca),ダイミ(Daime),ヤヘイ(Yajé)あるいはNatema,Vegetalとも呼ばれ,ブラジル・ペルーなどの先住民が古来より受け継いできた,催幻覚成分を含む飲料の呼称である。当地ではアヤワスカは太古からの神の恵みと考えられており,シャーマンが精霊と交信し病気の治療や未来を占う儀式の際に利用される6)。ビートニク文化圏にアヤワスカを知らしめたのは,William S. Burroughs(ウィリアム・S・バロウズ)による1963年の著書,麻薬書簡である。近年では欧米人が意識変容状態や霊的体験を得るために使用し,十年ほど前からは日本人も南米奥地を訪れたり通信販売により入手したアヤワスカを飲用し,その経験はインターネットや出版物上で好意的に表現されている。
今回我々は,幻覚キノコであるマジックマッシュルーム(以下,MMと記載)の頻回な使用の結果,度々精神病状態となり精神科入院治療を要した女性が,2年の期間を置いた後にアヤワスカを単回摂取したところ,精神病症状の再燃に至った症例を経験した。アヤワスカには害が少ないとする見解がある一方で,有害事象の報告もあり,含有される成分は米国においても本邦においても規制を受けている。しかし我々の調べた限り,アヤワスカの有害性についての症例報告は本邦に存在しない。ここに我々の経験した症例を報告し,アヤワスカの有害性について注意を喚起したい。
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