icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学52巻8号

2010年08月発行

私のカルテから

他剤での治療が困難であったBPSDに対し,blonanserinが有効であった2例

著者: 品川俊一郎1 中山和彦1

所属機関: 1東京慈恵会医科大学精神医学講座

ページ範囲:P.823 - P.825

文献概要

はじめに

 認知症患者では記憶障害や見当識障害などの認知機能障害のみならず,幻覚,妄想,興奮,攻撃的言動といった症状が出現する。これらの症状はBPSD(behavioral and psychological symptoms of dementia,認知症の行動心理学的症候)と呼ばれる。

 BPSDは介護者の負担を増大させ,入院や入所の時期を早める原因ともなるため1),そのマネージメントが重要である。薬物治療においては,高齢患者に対する副作用の少なさから,近年は非定型抗精神病薬が多く用いられる。しかし,2005年にFDA(Food and Drug Administration)が高齢認知症患者のBPSDに対する非定型抗精神病薬の使用についての勧告をしたため,非定型抗精神病薬の使用を控える動きもあり,依然としてBPSDに対する薬物療法のエビデンスは確立していない。

 今回我々は,他の薬剤で治療が困難であったBPSDに対し,非定型抗精神病薬であるblonanserinを投与したところ改善を認めた2例を経験した。これまでに同剤によるBPSDの治療に関する報告は少ないため,若干の考察を加えて報告する。なお,症例の記載にあたり患者個人が特定されないよう配慮し,症例理解が損なわれない範囲で一部改変した。家族に適応外使用である旨を説明したうえで,同意を得て薬剤を使用した。本報告は一般企業・団体との関連はなく,利益相反は生じない。

参考文献

1) Coen RF, Swanwick GR, O'Boyle CA, et al:Behaviour disturbance and other predictors of carer burden in Alzheimer's disease. Int J Geriatr Psychiatry 12:331-336, 1997
2) Laszy J, Laszlovszky I, Gyertyan I:Dopamine D3 receptor antagonists improve the learning performance in memory-impaired rats. Psychopharmacology(Berl) 179:567-575, 2009
3) 村崎光邦,西川弘之,石橋正:ドパミン-セロトニン拮抗薬―新規統合失調症治療薬blonanserinの受容体結合特性.臨精薬理 11:845-854,2008
4) 西尾彰泰,植木啓文:レビー小体型認知症の幻視に対してブロナンセリンが著効した1例.精神医学 51:561-564,2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら