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文献詳細

雑誌文献

精神医学52巻9号

2010年09月発行

文献概要

研究と報告

精神科疾患の診断をめぐる諸問題―精神科医327名のアンケート調査から

著者: 江川純1 遠藤太郎1 染矢俊幸1 下田和孝2 塩入俊樹3 山田尚登4 髙橋三郎25

所属機関: 1新潟大学大学院医歯学総合研究科精神医学分野 2獨協医科大学精神神経医学講座 3岐阜大学大学院医学系研究科神経統御学講座精神病理学分野 4滋賀医科大学精神医学講座 5埼玉江南病院

ページ範囲:P.891 - P.898

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抄録

 日本の国際的診断方式の使用状況を調査する目的でアンケート調査を実施し,327名の精神科医から回答を得た。回答者を基準派(診断に操作的診断基準を重視する群)と記述派(診断に記述的診断方法を重視する群)に分け,その比較を中心に解析した。基準派の中でも説明・告知には記述的診断方法を用いるものが17.7%,記述派の中でも明確な診断基準による診断を治療上有用と答えたものが45.3%おり,また代表的な4つの精神疾患の診断確定法では,記述派は疾患により多様な診断方法を用いるなど,両派にはともに目的別に両診断を使い分ける群が存在した。双方の長所と短所を十分に把握したうえで,互いの短所を相補う形で用いられることが望ましいと考えられた。

参考文献

1) American Psychiatric Association:Quick Reference to the Diagnostic Criteria from DSM-Ⅳ-TR. Washington D.C. and London, 2000(髙橋三郎,大野裕,染矢俊幸 訳:DSM-Ⅳ-TR精神疾患の分類と診断の手引(新訂版).医学書院,2003)
2) American Psychiatric Association:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fourth Edition, Text Revision;DSM-Ⅳ-TR. Washington D.C. and London, 2000(髙橋三郎,大野裕,染矢俊幸 訳:DSM-Ⅳ-TR精神疾患の分類・統計マニュアル,新訂版.医学書院,2003)
3) Kupfer DJ, First MB, Regier DA:A Research Agenda for DSM-V, American Psychiatric Publication, Washington DC and London, 2002(黒木俊秀,松尾信一郎,中井久夫 訳:第1章 DSM-Ⅴにおける分類命名法の基本.DSM-Ⅴ研究行動計画.pp14-49,みすず書房,2008)
4) 丸田敏雅,松本ちひろ,飯森真喜雄:ICD-11「精神および行動の障害」作成の動向―これまでの経緯とDSM-Ⅴ作成の活動状況.精神科診断学 2:3-27,2009
5) 長峯正典,勝強志,加藤隆弘,他:日本における精神科疾病分類(ICDおよびDSM)に関するアンケート調査―New Zealandとの比較も踏まえて.精神医学 49:1045-1052,2007
6) 髙橋誠,髙橋三郎,染矢俊幸:DSM診断はどこまで受け入れられたか? 精神医学 43:831-839,2001
7) 髙橋三郎:精神科疾患の診断をめぐる問題 東京精医会誌 26:1-7,2008
8) World Health Organization:The ICD-10 Classification of Mental and Behavioural Disorders:Clinical descriptions and diagnostic guidelines. Geneve, 1992(融道男,中根允文,小見山実 訳:ICD-10精神および行動の障害(新訂版).医学書院,2007)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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