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文献詳細

雑誌文献

精神医学52巻9号

2010年09月発行

文献概要

短報

難治化した抑うつ状態からの回復過程で体感幻覚を呈した中年男性例へのrisperidoneの効果

著者: 山下晃弘12 澤村岳人1 羽部仁1 野村総一郎2

所属機関: 1自衛隊中央病院精神科 2防衛医科大学校精神科

ページ範囲:P.899 - P.902

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はじめに

 身体疾患がないのに,奇妙な体感の異常を訴える病態像は体感幻覚,またはセネストパチー(cenestopathy)と呼ばれる。体感幻覚(セネストパチー)はDupréとCamusにより1907年に提唱された概念4)である。狭義のセネストパチーは単一症状として体感幻覚を呈する疾患をさすが,広義のセネストパチーは症状としての体感幻覚を意味し,統合失調症,気分障害,神経症,器質性疾患などに広く認められる7)。体感幻覚は,気分障害では心気妄想を伴ううつ病に認められることが多いが,躁状態で認められた体感幻覚も報告5)されている。今回我々は,難治化した抑うつ状態からの回復過程で体感幻覚が出現し,4か月間持続した中年男性例を経験した。体感幻覚の出現後に追加投与したrisperidoneが体感幻覚と抑うつ症状に効果があったので報告する。

 症例については,個人情報が特定されないように一部を変更し記載した。

参考文献

1) Akiskal HS, Hantouche EG, Allilaire JF, et al:Validating antidepressant-associated hypomania (bipolar Ⅲ):A systematic comparison with spontaneous hypomania (bipolar Ⅱ). J Affect Disord 73:65-74, 2003
2) American Psychiatric Association:Quick Reference to the Diagnostic from DSM-IV-TR. Washington D.C. and London, 2000 (高橋三郎,大野裕,染矢俊幸 訳:DSM-Ⅳ-TR 精神疾患の分類と診断の手引.医学書院,2002)
3) Baethge C, Baldessarini RJ, Freudenthal K, et al:Hallucinations in bipolar disorder:Characteristics and comparison to unipolar depression and schizophrenia. Bipolar Disorders 7:136-145, 2005
4) Dupré E, Camus P:Les cénesthopathie. L' Encéphale 2:616-631, 1907
5) 遠藤俊吉,山本裕水,福田博文,他:セネストパチーと躁うつ病.精神医学 24:27-34,1982
6) Freeman MP, Stoll AL:Mood Stabilizer Combinations:A review of safety and efficacy. Am J Psychiatry 155:12-21, 1998
7) 保崎秀夫:セネストパチーとその周辺.精神医学 2:325-332, 1960
8) 井上猛,小山司:難治性うつ病.上島国利,樋口輝彦,野村総一郎,他 編,気分障害.医学書院,pp 512-533,2008
9) 加藤正明,保崎秀夫,笠原嘉,他 編:精神医学事典.弘文堂,1985
10) 高橋徹,吉松和哉:セネストパチーの臨床類型についての1考察.精神医学 40:507-516,1998

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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