文献詳細
巻頭言
災害時に見えてくる,これからの子どものメンタルヘルス対策に必要なこと
著者: 神尾陽子1
所属機関: 1国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 児童・思春期精神保健研究部
ページ範囲:P.934 - P.935
文献概要
今回の東日本大震災の被災地域は,医療全般に医師不足の地域であり,子どものメンタルヘルスについても空白地帯であった。これからの中長期的な災害後のメンタルケアは,日本児童青年精神医学会や日本小児科学会など関連学会が自治体と共同して計画している専門医の派遣なども意義が大きいが,これまで欠けていた,地域内の子どものメンタルケアの体制整備とサポートの継続性こそ必要不可欠である。このような実情を踏まえて,国や被災自治体,大学などが連携して,先例のない大規模かつ長期的なメンタルヘルス・サービス体制の構築に取り組もうとしているが,この大事業の成功を心から願うとともに,これまでなかなか克服できなかったバリアを越える,新しい地域モデルとなることを期待する。ここでいうバリアとは,まず,保健医療と教育の縦割り体制であり,第二に,一般小児科医と(児童)精神科医の協力体制の不足であり,第三に,児童精神科医と成人精神科医の連携の不足,などを指す。
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