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文献詳細

雑誌文献

精神医学53巻10号

2011年10月発行

私のカルテから

健忘の回復を得た全生活史健忘の入院精神療法の一経過―麻酔面接の意義について

著者: 多田真理子12 中島直1

所属機関: 1医療法人社団新新会多摩あおば病院 2NTT東日本関東病院精神神経科

ページ範囲:P.1020 - P.1022

文献概要

はじめに

 全生活史健忘は,自己に関する一切の記憶を想起しない一方,一般的知識は保たれ日常生活には支障を来さない。Jaspers2)が報告し,本邦では谷4)の報告が最初である。ICD-10ではF44.1解離性遁走の部分症状と考えられ,数年に及ぶ場合や再遁走も多い。筆者らは,全生活史健忘で入院し,精神療法を中心に2か月半経過後,麻酔面接を契機に生活史を知り得た例を経験した。葛藤状況を含んだ来歴へ直面後も病状悪化なく軽快退院し,本病態経過の一類型が示唆されたため報告する。個人情報保護のため症例には若干の変更を加え,学術報告を文書で説明し,同意を得た。

参考文献

1) 日野俊明:遁走を伴った全生活史健忘を呈した1症例.臨床精神医学 27:211-219, 1998
2) Jaspers K 著,内村裕之,西方四方,島崎敏樹,他 訳:精神病理学総論 上巻.岩波書店,p268, 1953
3) 高橋祥友:解離性障害の病態と治療[発表要旨].精神経誌 101:60-64, 1999
4) 谷 望:逆行性健忘症の一例―福岡幸雄君病状記.犯罪と医学 2:31-35, 1950

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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