icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学53巻11号

2011年11月発行

文献概要

特集 震災時の避難大作戦:精神科編

災害時の精神科疾患の反応

著者: 木下裕久1 中根秀之2 中根允文34

所属機関: 1長崎大学病院精神科神経科 2長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻リハビリテーション科学講座精神障害リハビリテーション学分野 3出島診療所 4長崎大学

ページ範囲:P.1065 - P.1070

文献購入ページに移動
はじめに

 筆者の一人(HK)は,2011年の5月連休直後より1週間,長崎大学病院の医療支援チームの一員として,福島県南相馬市での医療支援活動に参加した。地元の南相馬市健康福祉部の保健師に同行し,市内4つの避難所を巡回した。また少数ながら在宅者の訪問診療を行った。このほかに,日本精神保健福祉士協会から継続派遣された精神保健福祉士の方々と一緒に,避難所スタッフなどの面接を行った。これは,避難所スタッフや保健センター,保健行政スタッフの地震後2か月間のご苦労をおもんばかり,ねぎらい,メンタル不調の早期対応を図る目的のものであった。避難所では,当初急性ストレス反応様の症状のある方や,不眠,不安感の増大した方がみられたようであったが,震災後2か月が過ぎたこともあり,避難している人々は徐々に落ち着きを取り戻しつつあった。しかし,精神科医である筆者には,避難所で過ごす多くの人々に隠れるようにひっそりと過ごしておられる精神疾患を抱える人の姿が気になった。

 本稿では,これまでの本邦および海外での自然災害の際に,それまで精神科医療を受けていた人々に起こった変化について,文献的考察を試み,また今回の被災地での経験を通して,災害時の医療従事者は,被災者のために何を準備し,どう行動すべきかについて論じてみることにする。

参考文献

1) 荒木憲一,高橋良,中根允文,他:自然災害と精神疾患―長崎水害(1982)の精神医学的研究―.精神経誌 87:285-302, 1985
2) 荒木憲一,太田保之,中根允文,他:災害に対する反応からみた単極型うつ病と双極型躁うつ病の異質性について.社会精神医学 7:108-112, 1984
3) Hyodo K, Nakamura K, Oyama M, et al:Long-term suicide mortality rates decrease in men and increase in women after the Niigata-Chuetsu earthquake in Japan. Tohoku J Exp Med 220:149-155, 2010
4) Johannesson KB, Lundin T, Hultman CM, et al:The effect of traumatic bereavement on tsunami-exposed survivors. J Trauma Stress 22:497-504, 2009 tsunami-Exposed survivors. Journal of Traumatic Stress 22:497-504, 2009
5) Kiliç C, Aydin I, Taskintuna N, et al:Predictors of psychological distress in survivors of the 1999 earthquakes in Turkey:effects od relocation after the disaster. Acta Psychiat Scand 114:194-202, 2006
6) Kinoshita H, Ishizaki Y, Nakane H, et al:A 13years follow-up study of psychiatric problems in evacuees from the Mt. Unzen-Fugendake volcanic eruption. Jpn Bull Soc Psychiat 13:297, 2004
7) Meewisse ML, Olff M, Kleber R, et al:The course of mental health disorders after a disaster:predictors and comorbidity. J Trauma Stress 24:405-413, 2011
8) 中根允文:社会精神医学のいま.中山書店,2010
9) Nishio A, Akazawa K, Shibuya F, et al:Influence on the suicide rate two years after a devastating disaster:A report from the 1995 Great Hanshin-Awaji EarthQuake. Psychiatry and Clinical Neurosciences 63:247-250, 2009
10) 太田保之,荒木憲一,本田純久:雲仙・普賢岳噴火災害被災住民の長期経過後の精神的問題.精神医学 48:241-246, 2006
11) 太田保之,荒木憲一,川崎ナヲミ,他:雲仙普賢岳噴火災害避難住民の精神医学的問題に関する2年間追跡研究.日本社会精神医学会雑誌 6:197-214, 1998
12) Suzuki Y, Tsutsumi A, Fukasawa M, et al:Prevalence of mental disorders and suicidal thoughts among community-dwelling elderly adults 3 years after the Niigata-Chuetsu earthquake. J Epidemiol 21:144-150, 2011
13) Thormar SB, Gersons BP, Juen B, et al:The mental health impact of volunteering in a disaster setting:a review. J Nerv Ment Dis 198:529-538, 2010
14) Wahlström L, Michálsen H, Schulman A, et al:Childhood life events and psychological symptoms in adult survivors of the 2004 tsunami. Nord J Psychiatry 64:245-252, 2010

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら