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短報
透析患者における夜間せん妄にブロナンセリンが有用であった2症例
著者: 宮本和子1 池田輝明1
所属機関: 1医療法人健心会桑園病院
ページ範囲:P.1103 - P.1106
文献購入ページに移動はじめに
せん妄の治療は,適切な身体的治療や環境改善とともに薬物療法が行われることが多い。特に精神運動興奮が顕著な場合では,カテーテルや点滴抜去など身体治療の妨げになることが多いため,薬物療法が必要となる場合が大部分である。従来のせん妄治療はハロペリドール1,13)を代表とする第一世代抗精神病薬が用いられてきたが,第一世代抗精神病薬は,嚥下困難や薬剤性パーキンソニズムなどの錐体外路症状,QTc間隔の延長,過鎮静などの副作用が問題となる。このような欠点を補うものとして,近年わが国や欧米を中心として,第二世代抗精神病薬によるせん妄治療への有用性が報告されている2,4,5,8,14)。
ブロナンセリンは脳内ドパミンD2受容体とセロトニン5-HT2A受容体に選択的な受容体親和性を有する第二世代抗精神病薬である。そして,アドレナリンα1受容体,ヒスタミンH1受容体,ムスカリン性アセチルコリンM1受容体への親和性は低いため,過鎮静,体重増加,内分泌系の副作用が少ないという特徴を併せ持っている10,11)。
今回,筆者らは,高齢者の透析患者におけるせん妄に対してリスペリドンを投与するも,過鎮静によりリハビリテーション(以下,リハビリ)がスムーズに行えなかった症例において,ブロナンセリンに切り替えたところ,それらの問題が解決した2症例を経験したので報告する。
せん妄の治療は,適切な身体的治療や環境改善とともに薬物療法が行われることが多い。特に精神運動興奮が顕著な場合では,カテーテルや点滴抜去など身体治療の妨げになることが多いため,薬物療法が必要となる場合が大部分である。従来のせん妄治療はハロペリドール1,13)を代表とする第一世代抗精神病薬が用いられてきたが,第一世代抗精神病薬は,嚥下困難や薬剤性パーキンソニズムなどの錐体外路症状,QTc間隔の延長,過鎮静などの副作用が問題となる。このような欠点を補うものとして,近年わが国や欧米を中心として,第二世代抗精神病薬によるせん妄治療への有用性が報告されている2,4,5,8,14)。
ブロナンセリンは脳内ドパミンD2受容体とセロトニン5-HT2A受容体に選択的な受容体親和性を有する第二世代抗精神病薬である。そして,アドレナリンα1受容体,ヒスタミンH1受容体,ムスカリン性アセチルコリンM1受容体への親和性は低いため,過鎮静,体重増加,内分泌系の副作用が少ないという特徴を併せ持っている10,11)。
今回,筆者らは,高齢者の透析患者におけるせん妄に対してリスペリドンを投与するも,過鎮静によりリハビリテーション(以下,リハビリ)がスムーズに行えなかった症例において,ブロナンセリンに切り替えたところ,それらの問題が解決した2症例を経験したので報告する。
参考文献
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2) 千葉茂,田村義之,稲葉央子,他:高齢者のせん妄と非定型抗精神病薬.老年精医誌 18:729-738, 2007
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14) 竹内崇,行実知昭,正木秀和,他:せん妄に対する非定型抗精神病薬の有用性.精神医学 49:821-828, 2007
15) 八田耕太郎:せん妄の治療指針―日本総合病院精神医学会治療指針1.星和書店,2005
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