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文献詳細

雑誌文献

精神医学53巻11号

2011年11月発行

文献概要

資料

大学病院外来患者における副作用実態調査―「患者の自覚的評価」と「医師の他覚的評価」の比較

著者: 森康浩1 兼本浩祐1

所属機関: 1愛知医科大学精神科学講座

ページ範囲:P.1107 - P.1113

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はじめに

 精神科薬物治療を受けている患者を対象にした臨床場面における副作用実態調査は,全国精神障害者家族連合会と聖マリアンナ医科大学が共同で行った調査8)や全国精神障害者ネットワーク協議会が行った調査が発表されているが5,6),いずれも「患者の自覚的評価」に焦点をあてた調査である。一方,今までの臨床研究や治験では,副作用は「医師の他覚的評価」に焦点があてられている。副作用の評価については,医師は錐体外路系症状などの目に見える副作用に注意を払うが,患者は「のどの渇き」などの目に見えにくい身体的不快感の副作用に注意を払うという報告4)や,統合失調症患者における薬剤性の性機能障害は,医療者と患者自身の認識に差があるとの報告がある1)。つまり,副作用の評価は「患者の自覚的評価」と「医師の他覚的評価」に乖離があることが予想されるが,我々の知る限り,その両者を同時に比較検討した研究は見当たらない。患者の自覚的評価と医師の他覚的評価に乖離がある場合,医師による副作用への対処が患者の思い通りに行われない可能性が高く,患者のアドヒアランス低下にも結びつくと思われる。

 そこで我々は当院オリジナル自己記入式副作用質問紙を患者とその主治医に対して同時に行うことで患者の自覚的評価と医師の他覚的評価とし,両者の比較検討を行ったので報告する。

参考文献

1) Hellewell JSE:Antipsychotic tolerability:The attitudes and perceptions of medical professionals, patients and caregivers towards the side effects of antipsychotic therapy. Europian Neuropsychopharmacology 8(S2):S248, 1998
2) Kurzthaler I, Fleischhacker WW:The clinical implications of weight gain in schizophrenia. J Clin Psychiatry 62(Suppl 7):32-37, 2001
3) 久住一郎,村下眞理,小山司:第二世代抗精神病薬の導入による新たな副作用の視点.臨精薬理 12:2325-2334, 2009
4) 長嶺敬彦:静かなる副作用とノンコンプライアンス.臨精医 35:17-26, 2006
5) NPO法人全国精神障害者ネットワーク協議会:2006年精神医療ユーザーアンケート調査報告書.pp87-88, 2006
6) NPO法人全国精神障害者ネットワーク協議会:精神医療ユーザーアンケート1000人の現状・声シリーズ 患者が望む薬 2010年度版.pp62-63, 2010
7) 岡上和雄:月刊ぜんかれん,5月号95頁,2003
8) 財団法人全国精神障害者家族連合会,聖マリアンナ医科大学神経精神科,聖マリアンナ医科大学統合失調症治療センター:在宅・通院患者さんに対する精神科薬の効果と副作用についてのアンケート調査.報告書.pp1-48, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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