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連載 「継往開来」操作的診断の中で見失われがちな,大切な疾病概念や症状の再評価シリーズ
プレコックス感
著者: 中井久夫1
所属機関: 1神戸大学
ページ範囲:P.1127 - P.1128
文献購入ページに移動Rümkeの概念の初出論文としてユトレヒト大学図書館が私に送ってきたものは『オランダ医学雑誌』に掲載された一般医師向けの講演である1)。要約すると,彼は自己の精神医学を「出会いの現象学」と命名し,スキゾフレニア患者との出会いにおいては,出会いとは相互的なものであるから,患者の対人接近本能欠如感がこれに対面する者に同じ欠如感を呼びさまし,この欠如感が意識されたもので,彼は,「私はこれを感じない時には私はどんな症状があっても,スキゾフレニアと診断しない」と断言している。また,他の症状は,正常人といわれる人たちが,一瞬ならば,あるいは孤独な時には経験しているのだと彼はいう。抗精神病薬のない時代であり,また,ナチス占領下で監視の眼を絶えず意識している時代だから人々は鋭敏に監視されているかどうかを意識していたという見方もあるだろうが,Rümkeが,生涯,午後7時間から1時間半は患者からの電話を最優先に受ける時間として実行していた人であることは留意する必要があるだろう(林宗義による)。声のトーンのほうが患者のこの状態をよく反映するかもしれない。
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