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文献詳細

雑誌文献

精神医学53巻4号

2011年04月発行

文献概要

私のカルテから

胃癌の告知を契機に否定妄想から「梅毒に感染した」という心気妄想へと発展した症例

著者: 高山剛13 野口正行23 加藤敏3

所属機関: 1上都賀総合病院精神科 2岡山県精神保健福祉センター 3自治医科大学精神医学教室

ページ範囲:P.347 - P.349

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はじめに

 日本でも最近の10年ほどで悪性腫瘍の告知は進んできており2),今後もこの流れは止まることはないであろう。告知の際には,患者・家族の心理に十分配慮すべきで,特に精神科疾患の既往のある場合には注意しなければならないといわれている。

 しかし,実際にどのようなことが起きるのかについて報告された事例は少なく,症例を蓄積していくことが必要である。我々は,うつ病の既往を持つ患者が胃癌告知をきっかけに「内臓が腐ってしまった」「梅毒に感染してしまった」という妄想が出現した症例を経験した。うつ病患者に対する癌告知後の変化を検討するうえで重要な所見を得たと考えたので報告する。なお,報告にあたってはプライバシーの保護に十分配慮し,また患者自身の同意を得ている。

参考文献

1) Gustafsson O, Theorell T, Norming U, et al:Psychological reactions in men screened for prostate cancer. Br J Urology 75:631-636, 1995
2) 保阪隆:緩和医療におけるコミュニケーション―精神科医の立場から.緩和医療学 9:41-47, 2007
3) 加藤敏:うつ病における妄想―悪の意味地平から.現代精神医学の20年.星和書店,pp100-110, 1995

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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