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文献詳細

雑誌文献

精神医学53巻4号

2011年04月発行

文献概要

連載 「継往開来」操作的診断の中で見失われがちな,大切な疾病概念や症状の再評価シリーズ【新連載】

仮性痴呆(認知症)

著者: 前田潔1 山本泰司2 長谷川典子2

所属機関: 1神戸学院大学総合リハビリテーション学部 作業療法学専攻 2神戸大学大学院医学研究科精神医学分野

ページ範囲:P.402 - P.404

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はじめに

 仮性痴呆(認知症)pseudodementiaとは認知症に類似した臨床像で,器質的疾患で引き起こされたものではないものをいう。うつ病に最も多くみられることから,うつ病性仮性痴呆(認知症)が最もよく知られていた。同時にガンザー症候群(Ganser's syndrome)も仮性痴呆(認知症)としてよく知られていたが,近年はまれとなり,また人口の高齢化から認知症が関心を集めていることもあって,今では仮性痴呆(認知症)といえば(うつ病性)仮性認知症を意味することが多い。

 本項では最初にGanser症候群について簡単に紹介し,次いでうつ病性仮性痴呆(認知症)について述べ,最後に,最近のうつ病性障害と認知症の関連性について触れてみる。なお,歴史的には仮性痴呆といわれてきたが,2004年の厚生労働省の通達以来,痴呆は認知症と置き換えられ,認知症という言葉は仮性認知症を含め定着している。そこでこれ以降は,仮性認知症という言葉を使うこととする。

参考文献

1) 長谷川典子,山本泰司,前田潔:老年期のうつ.大野裕 編,うつ病治療ハンドブック.金剛出版,2011
2) 長谷川典子,山本泰司,前田潔:気分障害と若年認知症をどう診分けるか―アルツハイマー病を中心に.精神科治療学 25:1299-1304, 2010
3) Kessing LV, Andersen PK:Does the risk of developing dementia increase with the number of episodes in patients with depressive disorder and in patients with bipolar disorder? J Neurol Neurosurg Psychiatry 75:1662-1666, 2004
4) 前田潔,長谷川典子,山根有美子,他:認知症研究の最近の進歩 気分障害と認知症.精神経誌(印刷中)
5) 小田陽彦,山本泰司,前田潔:特集 せん妄の診断と治療に関する新しい知見Ⅰ せん妄の病態生理はどこまでわかったか.精神科治療学 22:879-884,2007
6) 大川慎吾,柿木達也,前田潔:非アルツハイマー型変性性痴呆との鑑別診断,臨床的特徴からの鑑別.西村恒彦,武田雅俊 編,アルツハイマー型痴呆の画像診断.メジカルビュー社,pp127-132,2001
7) Saczynski JS, Beiser A, Seshadri S, et al:Depression syndroms and risk of dementia:The Framingham heart study. Neurology 75:35-41, 2010
8) Sun X, Steffens DC, Au R, et al:Amyloid-associated depression:A prodoromal depression of Alzheimer disease? Arch Gen Psychiatry 65:542-550, 2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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