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文献詳細

雑誌文献

精神医学53巻4号

2011年04月発行

文献概要

書評

―加藤 敏 著―人の絆の病理と再生―臨床哲学の展開

著者: 井原裕1

所属機関: 1獨協医科大学越谷病院こころの診療科

ページ範囲:P.409 - P.409

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 精神病理学の課題は,究極において,「人間とは何か」という問いに,臨床的観点から解答を与えることにある。それは,神経科学の侍女でも,精神療法の技術論でもない。精神病理学は,学祖たる西丸四方,島崎敏樹,村上仁以来,広範な人間学的関心の上に進められてきた。島崎の「人格の病」が『思想』に掲載されたように,学の出発からして思想的なものへの志向性を有していた。「哲学と精神医学」あるいは「人間学と精神医学」のテーマは,精神病理学のレゾン・デートルそのものである。

 本書の著者は,学生時代から哲学に傾倒。独仏の文献を渉猟したデビュー論文「哲学と精神医学」(加藤敏,宮本忠雄:精神医学23:748-767,1981)を本誌に寄稿したときは,まだ32歳の青年であった。2年後,「『自己-事物-他者』の三項関係から見た分裂病」(臨精病理 4:57-78,1983)を発表。現象学の基本概念「パースペクティブ」を精神病理諸症状において論じた。以来,著者は,デビュー以来のテーマを一貫して追求。今や,安永浩,木村敏,中井久夫といった‘great thinker’の系譜を引き継ぐ存在である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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