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文献概要
連載 「継往開来」操作的診断の中で見失われがちな,大切な疾病概念や症状の再評価シリーズ
通過症候群
著者: 原田憲一1
所属機関: 1武田病院
ページ範囲:P.503 - P.505
文献購入ページに移動通過症候群とは,ドイツErlangen大学のWieck, Hans Heinrichが1956年の論文5)で,Durchgangs-Syndromと名付けて提唱したことに始まる。それは「意識混濁のない,回復可能な外因性精神病像」である。彼は脳挫傷の患者が意識喪失の状態から次第に回復していく過程で,もはや意識混濁は認められず情動障害や健忘症候群のみを示す時期があることに注目し,「通過時期の症候群Syndrome des Durchgangsstadiums」と呼んだ。
通過症候群はいわゆる「症候群」ではない。Wieck自身,通過症候群という名称が概念であって「症状ないし症候群」の名前ではないこと,「状態形式Zustandform」であって「現象像Erscheinungbild」ではないことを繰り返し強調している6)。
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