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文献詳細

雑誌文献

精神医学53巻5号

2011年05月発行

文献概要

「精神医学」への手紙

有痛性血管脂肪腫を心気妄想と誤診するところであった

著者: 山口成良1

所属機関: 1松原病院

ページ範囲:P.507 - P.507

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 〈症例〉 中国国籍の学生が,X年10月私の勤務している病院を受診した。診察はすべて英語で行った。主訴を問うたところ,「腹部にピンが入っているから取ってほしい」との訴えであった。この主訴を聞いてびっくりした。当院は精神科病院で外科がないのに,なぜ受診したのか不思議であった。腹部を視診したところ,右中腹部を指して,この辺にピンが入っているという。外部から傷口が見えないが,痛みを感ずるという。X線検査をしたが,本人の訴えるピンは腹部に認められないので総合病院へ紹介してよいか問うたところ,そうしてほしいというので,診療情報提供書を書いた。後日,K大学附属病院皮膚科から,「触診上明らかに圧痛を示す部位がありましたがはっきりとした腫瘤は触れませんでした。しかし,腹部エコーをしたところ筋膜上に母指頭大の腫瘤を認めました。ご本人は手術を希望されたため局所麻酔下に切除したところ,組織は血管脂肪腫でした」という報告書がきて,さらにびっくりした。皮膚科の素養がなかったため,もう少しで心気妄想と誤診するところであった。

 考察 坂本2)によれば,有痛性皮膚腫瘍としては,その頭文字をとり,“ANGEL”として,A=angiolipoma(血管脂肪腫),angioleiomyoma(血管平滑筋腫),angioblastoma Nakagawa(血管芽細胞腫(中川)),N=neurilemmoma(神経鞘腫),neuroma(神経腫),G=glomus tumor(グロムス腫瘍),granular cell tumor(顆粒細胞腫),E=eccrine spiroadenoma(エックリン螺旋腫),L=leiomyoma(平滑筋腫)が広く知られているという。また,Naversenら1)により,LEND AN EGG”とも呼称されている。坂本は,血管脂肪腫では,圧痛は25~60%の症例にみられるが,自発痛は少なく,思春期以降の男性に好発すると記載している。

参考文献

1) Naversen DN, Trask DM, Watson FH, et al:Painful tumors of the skin:"LEND AN EGG". J Am Acad Dermatol 28:298-300, 1993
2) 坂本ふみ子:有痛性皮膚腫瘍.MB Derma 121:53-60, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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