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文献詳細

雑誌文献

精神医学53巻5号

2011年05月発行

書評

―広沢正孝 著―成人の高機能広汎性発達障害とアスペルガー症候群―社会に生きる彼らの精神行動特性 フリーアクセス

著者: 阿部隆明12

所属機関: 1自治医科大学精神医学 2自治医大とちぎ子ども医療センター

ページ範囲:P.510 - P.510

文献概要

水先案内となる格好の1冊

 1980年代初頭にWingによって提唱されたアスペルガー症候群という名称や,高機能広汎性発達障害,自閉症スペクトラム障害といった用語は,わが国でもこの10年で瞬く間に人口に膾炙するようになった。当初は児童精神医学の領域で起きた現象は,当事者たちの手記の相次ぐ公開をも促し,通常の生活を送っている成人にも定型発達とは異なる認知・行動パターンがあるという理解は進んだように見える。とはいえ,高機能広汎性発達障害といわれても,実際にこれを診察したことのない,あるいはこれに気づかなかった一般の精神科医にはイメージがわかない面があった。

 なるほど最近では,特にアスペルガー症候群を中心とした高機能広汎性発達障害に関して,精神医学の雑誌で次々に特集が組まれてはいる。しかしながら,いずれも啓発的な解説や症例報告が中心であり,しかも児童精神医学の立場からのものも多く,成人を対象とする一般精神科医の心にはいまひとつ響いていない感があった。発達障害も高機能になればなるほど,また成人になればなるほど,その特性が見えづらくなるためである。こうした事情を踏まえると,本書は統合失調症をはじめとした成人の精神病理に精通した著者が成人の高機能広汎性発達障害を論じている点で特筆に値する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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