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雑誌目次

雑誌文献

精神医学53巻6号

2011年06月発行

雑誌目次

巻頭言

東日本大震災,そして小考

著者: 三島和夫

ページ範囲:P.520 - P.521

 巻頭言の執筆に取りかかるも,年度末の慌ただしさの中で筆がはかどらずにいたが,ようやく腰を据えてパソコンに向かった矢先に,このたびの東日本大震災に遭遇した。私の研究所のある東京都小平市でも震度5弱の地震に見舞われた。震源地が近いのかと思いきや,はるか遠方の三陸沖と聞いて冷や汗が驚愕に代わり,その後の痛ましい震災報道には言葉も出ない一日であった。震災によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに,被災された多くの皆様に対し心からお見舞い申し上げます。その後も計画停電対処などその日その日の雑事に追われて,ようやく震災1か月後の本日,再び執筆に取りかかっている。

研究と報告

包括型地域生活支援プログラム(ACT)のプログラム要素に対する利用者認知尺度の信頼性と妥当性の検討

著者: 贄川信幸 ,   大島巌 ,   園環樹 ,   小川雅代 ,   深澤舞子 ,   伊藤順一郎

ページ範囲:P.523 - P.533

抄録

 本研究では,重い精神障害を持つ人たちに対する包括型地域生活支援プログラム(ACT)のプロセスを利用者が評価する,ACTのプログラム要素に対する利用者認知尺度の信頼性と妥当性を検討した。千葉県国府台地区で実践されているACT-Jの利用者102名のうち65名から回答を得た(回収率63.7%)。本尺度はほぼ十分な内的整合性と再検査信頼性が確認された(α:0.67~0.85,r:0.74~0.91)。また,サービス満足度との有意な相関が示され,併存的妥当性が確認された(r:0.35~0.60)。本尺度は,ACTの重要要素に対する利用者の認識をとらえられ,ACTの質向上に有用な情報を提供し得ると考えられた。

右側頭葉の髄膜腫摘出後に統合失調症様症状が改善した1例

著者: 菊池章 ,   鈴木志欧也

ページ範囲:P.535 - P.542

抄録

 50代の男性の自己臭妄想の1例を経験した。症例の右側頭葉に直径2.5cmほどのmeningiomaが発見され,摘出術が行われた。腫瘍摘出後,不眠の症状が残ったものの,自己臭妄想,幻聴などは軽快した。統合失調症としては,発病年齢が高いこと,症状が非典型的であること,手術の前後で症状が大幅に軽減したこと,腫瘍の圧迫部位と精神症状の関連が妥当であることから,髄膜腫による器質性妄想性障害と診断した。手術後にはSchniderの1級症状が消失していたが,統合失調症の成り立ちを考えるうえでも興味深い症例である。

Aripiprazoleのせん妄に対する有用性

著者: 吉池卓也 ,   竹内崇 ,   佐々木健至 ,   石川洋世 ,   藤田宗久 ,   熱田英範 ,   正木秀和 ,   西多昌規 ,   行実知昭 ,   大島一成 ,   柏淳 ,   山本直樹 ,   車地暁生 ,   西川徹

ページ範囲:P.543 - P.549

抄録

 非定型抗精神病薬はせん妄の治療に広く用いられている。しかしながら,せん妄に対するaripiprazoleの報告は少ない。今回我々は,aripiprazoleのせん妄に対する有効性と安全性について検討したので報告する。対象はICD-10でせん妄と診断された患者17例で,有効性の判定には日本語版せん妄評価尺度98年改訂版の重症度得点を使用した。13例において有効性が認められ,有効率は76.5%であった。初回投与量は5.8±0.8mg/日,最大投与量は8.1±3.3mg/日,効果が最大に達するまでの日数は5.4±4.6日であった。ふらつきが3例(17.6%),眠気が2例(11.8%)に認められたが,重大な有害事象は認められなかった。以上から,aripiprazoleのせん妄に対する有効性と安全性が示唆された。今後さらなる研究が望まれる。

援助職におけるLiebowitz Social Anxiety Scale日本語版の値と疾病理解との関連について

著者: 森山泰 ,   今坂康志 ,   村松太郎 ,   加藤元一郎 ,   三村將 ,   鹿島晴雄

ページ範囲:P.551 - P.556

抄録

 社交不安障害(social anxiety disorder;SAD)では重症であるほど疾病理解が不良である臨床的印象があり,それを確かめるために調査を行った。対象は援助職126名である。自記式質問表を実施した結果,援助職では高率に社会不安障害が疑われ,しかも重症である割合が多かった。また全般性SADが疑われる群では抑うつ,主観的重症度が強くなるにもかかわらず,疾病としての理解は不良であった。さらに調査項目の関連を調べたところ,SAD症状およびSADの主観的重症度は抑うつと関連していた。以上の結果より,SADが疑われる群では,全般性など重症な症例ほど,疾病理解が不良(否認が強い)であることが示唆された。

短報

診療記録を用いたDUP評価における評価者間の一致度について

著者: 伊藤慎也 ,   長谷川友紀 ,   松本邦愛 ,   辻野尚久 ,   東儀奈生 ,   水野雅文

ページ範囲:P.559 - P.562

はじめに

 精神病未治療期間(duration of untreated psychosis;DUP)は,統合失調症をはじめとする精神病の発症,すなわち精神病水準の臨床的顕在化から精神科的治療の開始までの期間を表す指標である。先行研究では,DUPは医療先進国においては1~2年前後であり4,6),この未治療期間が短いほど転帰がよいことが報告されている1,7)

 DUPの評価は,疾病の未治療期間を数量化し,地域間比較や介入成果を検討すること,さらに精神保健の普及啓発など公衆衛生の観点からは理解しやすく有意義な指標である。一方,文字通りには発病時点の同定を求める作業であり,本来的に後方視的作業であり,精神病理学的厳密さからはきわめて困難な作業である。本邦においても適切な早期受診を確立するために,初回エピソード統合失調症におけるDUPに関する研究が行われている5,6)ものの,DUPの評価方法は先行研究によりさまざまであり,評価者間の一致のほか,さまざまな問題点が指摘されている2)

 そこで本研究では,各施設および各評価者におけるDUP評価のばらつきを検討するべく,多施設からの参加者を得て,診療記録を用いたDUP評価の一致率を明らかにした。

ステロイド補充療法中に軽躁状態を呈したACTH単独欠損症の2例

著者: 冨田洋平 ,   萬谷昭夫 ,   藤原寛子 ,   和田健 ,   佐々木高伸 ,   日域広昭 ,   山脇成人

ページ範囲:P.563 - P.567

はじめに

 副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)単独欠損症は下垂体前葉ホルモンのうちACTHのみの分泌が障害される疾患で,人口100万人あたりの年間発症率は0.86人という比較的まれな疾患である3)。頭部外傷,髄膜炎,結核,empty sella症候群,下垂体腫瘍,自己免疫性下垂体炎などが原因と考えられているが,ほとんどの症例が原因不明の特発性に分類されている10)。ACTH欠損により二次的に生じる副腎不全のため,全身倦怠感・食欲不振,意識障害,体重減少,悪心・嘔吐,発熱,皮膚乾燥,筋痛,精神症状などの症状がみられる2)。また内分泌学的には血中ACTH・コルチゾールの基礎値,分泌予備能の低下を認め,ステロイド補充療法を行うことが主な治療である3)。近年,抑うつ症状を呈し抗うつ剤への治療抵抗性を示す場合は,ACTH単独欠損症を鑑別診断として考慮する必要があるとの報告8)やせん妄9),不機嫌状態4),その他多彩な精神症状11)を伴ったACTH単独欠損症の症例報告がみられ,精神科領域においても注意すべき疾患と考えられる。

 ステロイド誘発性精神障害では,多幸感,躁状態やうつ状態,不安,幻覚・妄想,緊張病症候群,せん妄などさまざまな精神症状がみられる。その発症の危険因子にはステロイド剤の断続的投与,長期間の投与,高齢,女性などが挙げられ,特にその投与量との関連が指摘されている5)

 今回我々は,比較的少量のhydrocortisone投与中に軽躁状態を呈したACTH単独欠損症の2例を経験したので報告する。

うつ症状を呈したBasedow病の1例

著者: 中山寛人 ,   兼行浩史

ページ範囲:P.569 - P.572

はじめに

 急性・亜急性に出現した精神症状に対して,治療方針を立て予後を見定めていくためには,治療初期にその症状が治療可能な身体疾患による外因性の病態に基づいていないか,しっかり鑑別することが基本かつ重要となる。甲状腺機能亢進症の代表的疾患であるBasedow病の有病率は1,000人に1~2人程度であり,身体症状とともに多様な精神症状を呈することが報告されており8),急性・亜急性に精神症状が出現した場合,本症も考慮に入れる必要がある。今回,thiamazoleに対する治療反応性から,Basedow病に伴う精神症状としてうつ症状を呈した可能性がある症例を経験したので,若干の考察を加え報告する。

 なお,症例報告に際して本人より同意を得た。また,個人情報保護に配慮して,事実に影響を与えない範囲で適宜修正を行った。

私のカルテから

防風通聖散と運動療法の併用による体重減少が,服薬アドヒアランス向上および陰性症状の改善につながった統合失調症の1例

著者: 松宮徹 ,   上村宏 ,   土田英人 ,   福居顕二

ページ範囲:P.573 - P.576

はじめに

 統合失調症の再燃・再発を避けるために服薬アドヒアランス向上が求められているが,副作用・疾患教育の不足などによりノンアドヒアランスは半数以上に上る3)。アドヒアランスが良好な患者と比較して,不良の場合には再発リスクが約3.7倍になるという報告もあり1),患者にとってはQOL(quality of life)の低下を招くとされる5)。今回我々は体重増加と陰性症状を認め,服薬と通院中断を繰り返す統合失調症に対し防風通聖散および運動療法を併用し,服薬アドヒアランスが向上し,陰性症状が改善した症例を経験したので報告する。報告にあたって口頭で本人の同意を得た。また支障のない範囲で症例の内容を変更した。

Risperidone long-acting injection(RLAI)投与後早期に精神症状が再燃した統合失調症の1例

著者: 深津孝英 ,   曽根健介 ,   森康浩 ,   兼本浩祐

ページ範囲:P.577 - P.579

はじめに

 近年アドヒアランスの問題や再発予防効果1)による医療費削減などの期待感から,本邦初めての第二世代抗精神病薬の持続性注射risperidone long-acting injection,以下RLAIと略す)が注目を集めている。しかし国内臨床試験では,24週間の短期試験で,治療のため入院または入院の延長を要した有害事象は,risperidone経口薬群5.9%に対し,RLAI群11.6%であり,その多くは,被害妄想,昏迷,幻覚などの精神症状であった3)。今回我々は,RLAI投与後早期に精神症状が再燃した統合失調症の1例を経験したので報告する。なお,症例の特定を避けるため,細部は論旨に影響のない範囲で改変してある。

アルツハイマー病の前駆状態と思われる患者にみられたうつ症状に塩酸ドネペジルが有効であった1例

著者: 岩本崇志 ,   中津啓吾 ,   小早川英夫 ,   竹林実

ページ範囲:P.581 - P.583

はじめに

 高齢化に伴い,老年期うつ病の罹患率は増加しており,非老年期と比べ予後は不良であるといわれている。この原因の一端として,認知症と境界不明瞭な一群が存在する可能性が指摘されている。今回,我々は,治療抵抗性かつ反復性の老年期うつ病が当初疑われた患者に対して,画像所見からアルツハイマー病(AD)の前駆状態と考えてmilnacipran(MIL)に塩酸ドネペジル(DPZ)を併用した結果,抑うつ症状の改善がみられた1例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。

連載 「継往開来」操作的診断の中で見失われがちな,大切な疾病概念や症状の再評価シリーズ

思春期妄想症

著者: 山下格

ページ範囲:P.585 - P.587

はじめに

 思春期妄想症は,村上靖彦氏らが1960年代から詳細な臨床的検討を重ねて報告した症候群である2,3)。その内容は対人恐怖と関連が深く,今もよく参照・引用される。

 一方,1980年に発表されたDSM-Ⅲには,社会恐怖(DSM-Ⅳの社交不安障害)がほとんど唐突に取り上げられ,わが国で早くから知られた対人恐怖との異同が関心を呼んだ。筆者は同じ1960年代から対人恐怖の診療の際にしばしば自己の症状に妄想的意味づけをする症例を経験したが,その訴えはDSMの記載とは異なり,上記の思春期妄想症に共通するところが多かった5,6)。今回,操作的診断基準による報告との相違を検討するため,村上氏に代わって要点を紹介する。

動き

精神医学関連学会の最近の活動―国内学会関連(26)(第1回)

著者: 高橋清久

ページ範囲:P.589 - P.608

 2011年3月11日に東日本大震災が起こり多くの方々がお亡くなりになり,いまだ避難所生活という方も数万人に上っています。こころからお悔やみ,お見舞いを申し上げます。この巻頭の文を書いている今でも,福島原発の行く道が見えない状態で不安感がぬぐえません。災害のために多くの学会が中止,延期のやむなきに至りました。それでもすべての学会がこの困難に立ち向かい,学術的側面から今後のわが国の復興へ貢献されることを願っています。

 この学会活動報告も26回目となりました。1980年代の学園紛争は学術研究の足を止めましたが,次第に復興し,各領域で活動が活発化してきました。それを機に島園安雄 国立精神・神経医療研究センター名誉総長が当時学術会議会員であったこともあり,勃興しつつある学会活動をまとめて紹介することを思いたたれ,それが今日まで続いています。この26年間に学術活動はますます活発化し,紹介する学術団体の数も当時の49から現在の68に増加しています。そのために一昨年からは2号に分けての紹介をしています。

「第47回日本犯罪学会総会」印象記

著者: 安部哲夫

ページ範囲:P.610 - P.611

 「第47回日本犯罪学会総会」は,2010年11月27日(土),藤田眞幸会長(慶應義塾大学医学部法医学教室教授)のもと,東京都新宿区信濃町の慶應義塾大学病院新棟11階大会議室にて開催された。本学会総会は,①心理学,②精神医学,③法科学,④法医学,⑤法学・社会学の5つの部門からの個別報告を中心に構成されている。それぞれの部門に固有の学会が複数存在し,専門的な活動を展開しているが,本学会では,その学問的成果に耳を傾け,学際的ないしは総合的に,犯罪に関する知見の交流の場として,さらには警察・司法・矯正・保護といった実務にも影響を与えるものとして継続的な活動を行ってきた。また例年,この総会において,その年度に最も関心の高いテーマを設定し,シンポジウムを開催している。後述のように,本総会でのシンポジウムは,「テロリズムとその対策」をテーマに開催された。以下,個別報告の概要を紹介する。

 心理学部門における個別報告は,小林寿一氏(科学警察研究所)を座長に進行され,①蓑下成子氏(川村学園女子大学文学部)他による「保護責任者遺棄に陥った夫婦のロールシャッハ・テスト比較」,②平間さゆり氏(川村学園女子大学大学院)他による「鳥獣戯画物語作成課題における被疑者3名の事例検討」,③菅原歩氏(国際医療福祉大学大学院)他による「摂食障害傾向のある者の盗みと罪悪感および親の養育態度との関連」が報告された。

書評

―アーサー・フリーマン 責任編集,ステファニー・H・フェルゴワーズ,アーサー・M・ネズ,クリスティン・M・ネズ,他 編,内山喜久雄,大野裕,久保木富房,他 監訳―認知行動療法事典

著者: 原田誠一

ページ範囲:P.613 - P.613

 このところ認知行動療法CBTに華やかなスポットライトがあたって,関連の書籍も続々と刊行されている。あるいは,CBT盛業の様子に食傷・困惑気味の諸兄姉もいらっしゃるのではなかろうか。そうしたさなか,500頁近いCBT事典の堂々の登場である。満腹気味のところにボリューム満点の濃厚フルコースが出てくるような按配,なきにしもあらずといった風情か。このような状況で,「またCBTの新刊本?」などの感想(否定的自動思考)が浮かぶのも無理からぬところかもしれない。でも,ちょっと待ってくださいね。評者の判断では,本書は精神医療に携わるすべての方が座右に置くに値する卓越した必読・百科事典(エンサイクロペディア)であり,自動思考に導かれるまま敬遠する(結論への飛躍)のはいかにも惜しい。以下,その所以を書き連ねてみましょう。

 選りすぐりの116項目に,CBTのエッセンスが見事に詰め込まれている様は圧巻である。項目を追っていくと自然にCBTの歴史を一望して(例:「行動療法」→「うつ病の認知療法」→「アクセプタンス&コミットメント・セラピー」;カッコ内は本書項目名),CBTの標的が理解できるようになっています(例:「うつ病の認知的脆弱性」)。またCBTのセッションに関して,①必須要素(例:「ソクラテス的対話」「ケースフォーミュレーション」),②治療技法(例:「エクスポージャー」「問題解決療法」),③特定の介入法(例:「再発予防」),④治療上の困難への対応(例:「治療抵抗」)などを通して,微に入り細にわたって学ぶことができる。

―米国睡眠医学会 著,日本睡眠学会診断分類委員会 訳,日本睡眠学会 発行,医学書院 販売―睡眠障害国際分類(第2版)―診断とコードの手引

著者: 陳和夫

ページ範囲:P.614 - P.614

睡眠医療者の共通認識を培うために

 睡眠学を学ぶに当たり,当然のことながら原著を読み,理解することが基本であるが,数多くの情報量を取得しなければならない現在,重要な知識を迅速にかつ正確に学ぶことも必須であり,適切な翻訳本の必要性にもつながる。また,睡眠学の領域はその学会員の構成をみてもわかるように,医師,検査技師,看護師などの睡眠障害に携わる医療者が多く存在する。検査,診断,治療にあたって,共通認識をもって対応することが他の領域にまして必要であり,さらに,新しい診断基準,概念も数多くみられる領域であることから,そのキャッチアップが重要である。実際,京都大学医学部附属病院の検査技師の方々も本書を大変喜び,随時参照されている。

 筆者の専門は呼吸器内科領域であり,サブスペシャリティとして睡眠学,その中でも睡眠呼吸障害を専門としている。閉塞性睡眠時無呼吸での過度の日中の眠気の鑑別には,睡眠関連呼吸障害によらない過眠を見分けることが重要であるが,そのためには睡眠学の中の専門領域からさらに関連する領域へとその知識を増やす必要があり,本書はこの点でも筆者にとっても大変ありがたい書籍になっている。また,睡眠関連呼吸障害群を担当されている原著者はBradley D,White D,Young T先生など,この領域で多くのことを発見し,進展に貢献してきた先生方であり,まさに,前書きにICSD-2の目的として書かれている「現在知られている睡眠障害と覚醒障害のすべてについて,科学的および臨床的論拠に基づいて記述すること」が実感できる。

学会告知板

第11回日本外来精神医療学会

ページ範囲:P.533 - P.533

テーマ 変貌する社会と外来精神医療

大会長 五十嵐良雄(医療法人社団雄仁会 メディカルケア虎ノ門院長)

副大会長 大西守(日本外来精神医療学会理事長,社団法人日本精神保健福祉連盟(常務理事))

日時 2011年7月16日(土),17日(日)

会場 東京ミッドタウン・ホール&カンファレンス(東京都港区赤坂9-7-2)

   URL:http://accessbrain.co.jp/gairaiseishin11/

第29回日本青年期精神療法学会

ページ範囲:P.562 - P.562

テーマ 青年の幸福とは何か,精神療法にできることは何か

会期 2011年12月3日(土)9時~16時30分:学会総会

   ※12月2日(金)18時~19時30分:市民公開講座

会場 川越市市民会館やまぶき会館(埼玉県川越市郭町1-18-7)

第4回(2011年度)関西森田療法セミナー(入門コース)

ページ範囲:P.572 - P.572

日時 2011年9月~2012年2月(月1回,全6回)日曜日 10:00~12:00

会場 大阪産業創造館,他大阪市内の会場(予定)

論文公募のお知らせ

テーマ:「東日本大震災を誘因とした症例報告」

ページ範囲:P.556 - P.556

「精神医学」誌では,「東日本大震災を誘因とした症例報告」(例:統合失調症,感情障害,アルコール依存症の急性増悪など)を募集しております。先生方の経験された貴重なご経験をぜひとも論文にまとめ,ご報告ください。締め切りはございません。随時受け付けております。

ご論文は,「精神医学」誌編集委員の査読を受けていただいたうえで掲載となりますこと,ご了承ください。

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今月の書籍

ページ範囲:P.612 - P.612

次号予告

ページ範囲:P.579 - P.579

投稿規定

ページ範囲:P.615 - P.616

著作財産権譲渡同意書

ページ範囲:P.617 - P.617

編集後記

著者:

ページ範囲:P.618 - P.618

 本号が出る頃には東日本大震災からはや3か月が経つ。ここで改めて,亡くなられた方々のご冥福をお祈りし,ご遺族に哀悼の意を表するとともに,被災された皆様にお見舞い申し上げます。

 太平洋戦争を体験していない者にとっては,彼の地から遠く離れていても,今回の津波ほど“根こそぎの喪失”というものがいかなるものであるのかを実感させられたことはないのではあるまいか。何もかもが押し流された光景を映像で目にしただけで,生々しい手触りがあるもののように無常を覚える。こうしたなか,精神科医に何ができるのかと自問すると,くしくも巻頭言で三島和夫先生がいくつか的確に答えられている。そこで三島先生が,大災害の後には判で押したようにいわれる「こころのケア」という言葉を使ってないのにホッとしたのは私だけだろうか。わかったようでわからない,この口当たりのよい言葉を軽々しく口にせず,精神科医が行う「こころのケア」とはいったい何なのかについて,これを機に反省してもよいだろう。同じことは災害後に決まって安易に使われるPTSDについてもいえよう。「こころのケア」がいつでもどこでも誰に対してでもできるほど精神科医は有能ではないし,トラウマがいかに刻まれ,そして溶け去っていくのかという,まさにこころの襞のありようについて豊かな教養を蓄えているわけでもない。避難所で静かに座す老婆のたたずまいが隣の被災者のこころのケアになっている場合だってあるだろう。小林幸子の歌を口ずさみながら悲哀を洗い流していく人も,北島三郎の歌声からトラウマを乗越えていく人もいよう。こころに接するには臆病なほどの姿勢がよいのかもしれない。こころは依然として「天使も踏むを恐れるところ」(E.M.フォースター)に違いないのだから。

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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