文献詳細
短報
診療記録を用いたDUP評価における評価者間の一致度について
著者: 伊藤慎也1 長谷川友紀1 松本邦愛1 辻野尚久2 東儀奈生2 水野雅文2
所属機関: 1東邦大学医学部社会医学講座 2東邦大学医学部精神神経医学講座
ページ範囲:P.559 - P.562
文献概要
精神病未治療期間(duration of untreated psychosis;DUP)は,統合失調症をはじめとする精神病の発症,すなわち精神病水準の臨床的顕在化から精神科的治療の開始までの期間を表す指標である。先行研究では,DUPは医療先進国においては1~2年前後であり4,6),この未治療期間が短いほど転帰がよいことが報告されている1,7)。
DUPの評価は,疾病の未治療期間を数量化し,地域間比較や介入成果を検討すること,さらに精神保健の普及啓発など公衆衛生の観点からは理解しやすく有意義な指標である。一方,文字通りには発病時点の同定を求める作業であり,本来的に後方視的作業であり,精神病理学的厳密さからはきわめて困難な作業である。本邦においても適切な早期受診を確立するために,初回エピソード統合失調症におけるDUPに関する研究が行われている5,6)ものの,DUPの評価方法は先行研究によりさまざまであり,評価者間の一致のほか,さまざまな問題点が指摘されている2)。
そこで本研究では,各施設および各評価者におけるDUP評価のばらつきを検討するべく,多施設からの参加者を得て,診療記録を用いたDUP評価の一致率を明らかにした。
参考文献
掲載誌情報