icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学53巻7号

2011年07月発行

文献概要

短報

認知機能障害に対して塩酸ドネペジルが有効であったクモ膜下出血後高次脳機能障害の1例

著者: 枝雅俊1 本田修2 原寛美3

所属機関: 1北海道立緑ヶ丘病院精神科 2白石脳神経外科病院 3慈泉会相澤病院リハビリテーション科

ページ範囲:P.655 - P.657

文献購入ページに移動
はじめに

 前交通動脈部の動脈瘤破裂によるクモ膜下出血(SAH)では,しばしば後遺症として記銘力障害などの高次脳機能障害が生じる。これは前交通動脈症候群と呼ばれ9),若年者にも生じ得る認知症状態である。この種の高次脳機能障害は,失職,経済的困難,対人関係の変化など,社会生活上の問題をもたらすとともに7),長年月にわたる介護を要するため,少なからぬ社会的コストを生じる。これまで対策としては,国内では薬物療法の有用性が認められず2),主にリハビリテーション中心のケアが行われてきた。我々は今回,SAH発症の約1年後からアルツハイマー型認知症治療薬である塩酸ドネペジル(商品名:アリセプト®)3~5mg/日を投与したところ,認知機能が改善し,地域社会への復帰を果たした1症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する(プライバシーに配慮して一部を改変)。

参考文献

1) Benke T, Köylü B, Delazer M, et al:Cholinergic treatment of amnesia following basal forebrain lesion due to aneurysm rupture:An open-label pilot study. Eur J Neurol 12:791-796, 2005
2) 卜蔵浩和,豊田元哉,河野直人,他:脳卒中の高次機能障害に対する薬物療法の試み.脳卒中 31:448-452, 2009
3) Foster M, Spiegel DR:Use of donepezil in the treatment of cognitive impairments of moderate traumatic brain injury. J Neuropsychiatry Clin Neurosci 20:106, 2008
4) 原寛美:記憶障害のリハビリテーションの進歩.老年精医誌 13:1007-1015, 2002
5) 原寛美:痴呆性疾患に対する認知リハビリテーション.老年医学 41:1693-1699, 2003
6) 原寛美 監修,相澤病院総合リハビリテーションセンター 執筆:高次脳機能障害ポケットマニュアル.医歯薬出版,pp43-64, 103-115, 2005
7) Hutter BO, Gilsbach JM, Kreitschmann I:Quality of life and cognitive deficits after subarachnoid haemorrhage. Br J Neurosurg 9:465-475, 1995
8) Whitehouse PJ, Price DL, Clark AW, et al:Alzheimer disease:Evidence for selective loss of cholinergic neurons in the nucleus basalis. Ann Neurol 10:122-126, 1981
9) Wright RA, Boeve BF, Malec JF:Amnesia after basal forebrain damage due to anterior communicating artery aneurysm rupture. J Clin Neurosci 6:511-515, 1999

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら