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特集 性同一性障害(GID)
日本精神神経学会「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン第3版」の概要と今日的問題
著者: 松本洋輔1
所属機関: 1岡山大学病院精神科神経科
ページ範囲:P.743 - P.748
文献購入ページに移動1998年10月16日,わが国で初めて公に性同一性障害の治療として埼玉医科大学において性別適合手術(sex reassignment surgery,以下SRS)が施行された。以後複数の医療機関がこの分野の治療に名乗りを上げ,今日では性同一性障害に対する身体的治療は,広く国民に認知されるものとなった。筆者の所属する岡山大学病院では,2001年1月以降2009年5月までに,造膣外陰部形成19例,除睾術5例,乳房切除手術141例,子宮卵巣切除・膣閉鎖・尿道延長術71例,陰茎形成術23例,子宮卵巣切除術25例が行われている4)。治療普及の背景には,日本精神神経学会の性同一性障害に関する委員会が発表した1997年5月28日付「性同一性障害に関する答申と提言」中で「性同一性障害の診断と治療のガイドライン」5)(以下,初版ガイドライン)が公表されたことにより,各医療機関がこのガイドラインに準拠して診療を進めることができるようになったことが挙げられる。埼玉医科大学におけるSRSはこのガイドラインに沿って実施されたものである。以後,2回の改訂を経て,現在は第3版のガイドラインが使用されている。
以下,同ガイドラインの意義と変遷,現行第3版ガイドラインの概要と現時点で検討されている問題点について概説する。
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