文献詳細
文献概要
特集 性同一性障害(GID)
小児,青年期の性同一性障害をめぐる諸問題
著者: 塚田攻1
所属機関: 1埼玉医科大学神経精神科・心療内科かわごえクリニック
ページ範囲:P.777 - P.782
文献購入ページに移動はじめに
近年,わが国で性同一性障害が注目され始めたのは,1996年7月2日,埼玉医科大学倫理委員会が性同一性障害の手術療法を正当な医療行為と判断したという大々的な報道がなされてからであろう。その答申の中で,ガイドラインを策定すべきであるとの提言がなされた。それを受けて,日本精神神経学会は性同一性障害に関する特別委員会を設け,1997年5月,性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(以下,ガイドライン3~5))の初版を策定した。その過程で,当事者の生活史・現病歴などを聴取し,多くの症例では幼少時から性別違和感を抱いていることも把握してはいたが,実際には小児の性同一性障害に関する治療経験はなく,初版ガイドラインの中では触れられなかった。
2001年10月より,人気テレビドラマ「3年B組金八先生」で性同一性障害をテーマにしたシリーズが放映され,社会における性同一性障害への関心と理解は,それまでとは比較にならないほどの拡がりをみせた。それを機に中学生や高校生の受診も増えてきた。その中で特に訴えが多かったものは,制服着用への抵抗と第二次性徴への嫌悪感であった。
その後,ガイドラインは2度にわたって改訂され,現在のものは第3版である。特に第2版への改訂作業の中では,第二次性徴への医学的介入も議論されたが,一般的治療としてガイドラインに盛り込むことは時期尚早とされた。しかし,なんらかの介入が必要な症例については,個別に検討することを妨げるべきではないとの判断から,ガイドライン上特に制約を設けることもなかった。
さらに,近年の新聞報道などで小学生の性同一性障害の例が紹介され,文部科学省から性同一性障害の児童生徒に配慮すべき通知が出されるに及んで,教育現場ではどのように対処したらよいのかという関心が高まってきた。この数年,MTX(male to X),FTX(female to X)と自称し,中性化や無性かを目指すといった性同一性障害と紛らわしい症例6)の受診も増えてきた。ジェンダー・アイデンティティや性指向が不確定だったり動揺的なものに対し,ICD-107)では性成熟障害(F66.0)なる項目を設けている。
近年,わが国で性同一性障害が注目され始めたのは,1996年7月2日,埼玉医科大学倫理委員会が性同一性障害の手術療法を正当な医療行為と判断したという大々的な報道がなされてからであろう。その答申の中で,ガイドラインを策定すべきであるとの提言がなされた。それを受けて,日本精神神経学会は性同一性障害に関する特別委員会を設け,1997年5月,性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(以下,ガイドライン3~5))の初版を策定した。その過程で,当事者の生活史・現病歴などを聴取し,多くの症例では幼少時から性別違和感を抱いていることも把握してはいたが,実際には小児の性同一性障害に関する治療経験はなく,初版ガイドラインの中では触れられなかった。
2001年10月より,人気テレビドラマ「3年B組金八先生」で性同一性障害をテーマにしたシリーズが放映され,社会における性同一性障害への関心と理解は,それまでとは比較にならないほどの拡がりをみせた。それを機に中学生や高校生の受診も増えてきた。その中で特に訴えが多かったものは,制服着用への抵抗と第二次性徴への嫌悪感であった。
その後,ガイドラインは2度にわたって改訂され,現在のものは第3版である。特に第2版への改訂作業の中では,第二次性徴への医学的介入も議論されたが,一般的治療としてガイドラインに盛り込むことは時期尚早とされた。しかし,なんらかの介入が必要な症例については,個別に検討することを妨げるべきではないとの判断から,ガイドライン上特に制約を設けることもなかった。
さらに,近年の新聞報道などで小学生の性同一性障害の例が紹介され,文部科学省から性同一性障害の児童生徒に配慮すべき通知が出されるに及んで,教育現場ではどのように対処したらよいのかという関心が高まってきた。この数年,MTX(male to X),FTX(female to X)と自称し,中性化や無性かを目指すといった性同一性障害と紛らわしい症例6)の受診も増えてきた。ジェンダー・アイデンティティや性指向が不確定だったり動揺的なものに対し,ICD-107)では性成熟障害(F66.0)なる項目を設けている。
参考文献
1) American Psychiatric Association Committee on Nomenclature and Statistics:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(4th edition text revised). American Psychiatric Association, Washington. D.C., 1994(高橋三郎,大野裕,染矢俊幸 訳:DSM-Ⅳ-TR 精神障害の診断・統計マニュアル.医学書院,2003)
2) 康 純:シンポジウム4 児童・思春期のGIDへの対応―教育と医療の現場から 大阪医科大学附属病院においてLHRHアナログ治療を決定した経過について.GID(性同一性障害)学会第13回研究大会,東京,2011.6.4
3) 日本精神神経学会・性同一性障害に関する特別委員会:性同一性障害に関する答申と提言.精神経誌 99:533-540, 1997
4) 日本精神神経学会・性同一性障害に関する第二次特別委員会:性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第2版).精神経誌 104:618-632, 2002
5) 日本精神神経学会・性同一性障害に関する委員会:性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第3版)(http://www.jspn.or.jp/ktj/ktj_k/gid_guideline/gid_guideline_no3.html)
6) 塚田攻:性同一性障害に似て非なるもの.日本性科学会雑誌 26:3-8, 2008
7) World Health Organization:The ICD-10 Classification of Mental and Behavioral Disorders:Clinical descriptions and diagnostic guideline. WHO, Geneva, 1992(融道男,中根允文,小宮山実 監訳:ICD-10 精神および行動の障害―臨床記述と診断ガイドライン.医学書院,1993)
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