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特集 性同一性障害(GID)
地域における医療連携
著者: 織田裕行1 片上哲也1 山田妃沙子1 山田圭造1 矢野裕子1 岡村宏美1 中平暁子1 吉野真紀1 鈴木美佐1 木下利彦1
所属機関: 1関西医科大学精神神経科学教室
ページ範囲:P.783 - P.787
文献購入ページに移動性同一性障害に対する医療にはさまざまな困難が存在する。なかでも他の精神科臨床において類をみないものとして,泌尿器科,婦人科,形成外科などの複数の科や複数の医療施設,そして臨床心理士,精神保健福祉士,看護師,弁護士などさまざまな職種と密接に連携し,多元的な治療構造を継続的に構築する必要性が挙げられる(図)。さらに,ホルモン療法や手術療法などの身体的治療を行う際には,精神科領域の治療と並行しつつ段階的に展開していく必要性がある。この多元性と多層性を伴う包括的治療の構造は性同一性障害の治療を行ううえで重要な意味を持つが,他方でその特殊性がごく少数の医療施設でしか専門的な治療が行われていない要因になっているとも考えられる。
本稿では,この性同一性障害に対する包括的治療の重要性を確認し,我々が経験した2つの異なる形態である,適応判定を含めて大学病院などの1つの病院で包括的治療を完結する「完結型」と,地域に根差した複数の医療施設が連携し適応判定と治療を提供する「連携型」について触れ,私見を述べていきたい。
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