文献詳細
特集 性同一性障害(GID)
文献概要
はじめに
我々は2001年1月より性同一性障害(GID)に対する性別適合手術(SRS)を行ってきた。岡山大学精神科を受診してGIDの確定診断を受けた患者も1,180名を超え2,12),これまで我々が行った乳房切除術を含むSRSも,延べ340例を超えた3,6~11,14,15,17,18)。この間に性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(特例法)が2003年に制定され,2006年には「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第3版)」が出され,GIDをめぐる医療環境も大きく変化してきた。また,GIDに関する情報がテレビやインターネットなどマスメディアを通じて入手しやすくなったため,自分がGIDではないかと自己判断して比較的早期に精神科を受診する患者が多くなった。
また我々は,GIDに対するSRSの手術手技を応用して副腎性器症候群やアンドロゲン不応症などの性分化異常,矮小陰茎などの先天性性器異常,炎症後外陰部変形などに対する手術治療を行ってきた4,5,13,16)。そして,これらGID以外の疾患においても手術治療のみならず,メンタルケアやホルモン補充療法など診療科連携による治療の必要性を痛感していた。そこで2010年9月,岡山大学病院にジェンダー関連疾患を包括的に治療する部門としてジェンダーセンターを設立した。
ここでは岡山大学病院にジェンダーセンターを設立した趣旨から実際の活動について報告し,海外における性別適合手術の問題について述べる。
我々は2001年1月より性同一性障害(GID)に対する性別適合手術(SRS)を行ってきた。岡山大学精神科を受診してGIDの確定診断を受けた患者も1,180名を超え2,12),これまで我々が行った乳房切除術を含むSRSも,延べ340例を超えた3,6~11,14,15,17,18)。この間に性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(特例法)が2003年に制定され,2006年には「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第3版)」が出され,GIDをめぐる医療環境も大きく変化してきた。また,GIDに関する情報がテレビやインターネットなどマスメディアを通じて入手しやすくなったため,自分がGIDではないかと自己判断して比較的早期に精神科を受診する患者が多くなった。
また我々は,GIDに対するSRSの手術手技を応用して副腎性器症候群やアンドロゲン不応症などの性分化異常,矮小陰茎などの先天性性器異常,炎症後外陰部変形などに対する手術治療を行ってきた4,5,13,16)。そして,これらGID以外の疾患においても手術治療のみならず,メンタルケアやホルモン補充療法など診療科連携による治療の必要性を痛感していた。そこで2010年9月,岡山大学病院にジェンダー関連疾患を包括的に治療する部門としてジェンダーセンターを設立した。
ここでは岡山大学病院にジェンダーセンターを設立した趣旨から実際の活動について報告し,海外における性別適合手術の問題について述べる。
参考文献
1) 中塚幹也:学校保健における性同一性障害―学校と医療との連携.日本医事新報 No.4521:60-64, 2010
2) 難波祐三郎:形成外科の治療指針update 2010 性同一性障害.形成外科 53:140, 2010
3) 難波祐三郎:性同一性障害の外科治療―女性から男性への手術(FtM).日本外科学会誌 111:241-245, 2010
4) 難波祐三郎:形成外科の治療指針update 2010 膣欠損症.形成外科 53(増刊):139, 2010
5) 難波祐三郎:形成外科の治療指針update 2010 性分化異常.形成外科 53(増刊):138, 2010
6) 難波祐三郎:性同一性障害の乳房治療.形成外科ADVANCEシリーズ 乳房・乳頭の再建と整容.克誠堂,pp267-274, 2010
7) 難波祐三郎:エキスパート形成再建外科手術 有茎前外側大腿皮弁を用いた陰茎再建.中山書店,pp364-377, 2010
8) 難波祐三郎,長谷川健二郎,木股敬裕:性同一性障害に対する造腟術の経験.形成外科 51:1197-1204, 2008
9) 難波祐三郎,長谷川健二郎,山下修二,他:性同一性障害に対する乳房切除の経験 第2報:下垂型乳房に対する治療.形成外科 51:203-209, 2008
10) 難波祐三郎,長谷川健二郎,渡辺俊之,他:性同一性障害に対する陰茎再建術の経験.形成外科 52:1343-1350, 2009
11) 難波祐三郎,木股敬裕:形成外科ADVANCEシリーズ 臀部・会陰部の再建と褥瘡の治療,陰茎再建.克誠堂,pp80-87, 2009
12) 難波祐三郎,木股敬裕:性同一性障害に対する包括的治療.形成外科 53:201-205, 2010
13) 難波祐三郎,木股敬裕:Pudendal-thigh flapを用いた半陰陽に対する造腟術の2例.形成外科 53:685-690, 2010
14) Namba Y, Sugiyama N, Yamashita S, et al:Vaginoplasty with an M-shaped perineo-scrotal flap in a male-to-female transsexual. Acta Medica Okayama 61:355-360, 2007
15) Namba Y, Sugiyama N, Yamashita S, et al:Phantom erectile penis after sex reassignment surgery. Acta Medica Okayama 62:213-216, 2008
16) Namba Y, Sugiyama N, Yamashita S, et al:Vaginoplasty with a Pudendal-Thigh Flap in intersexuals. Acta Medica Okayama 62:415-419, 2008
17) 難波祐三郎,筒井哲也,木股敬裕,他:性同一性障害に対する乳房切除の経験.形成外科 49:985-991, 2006
18) Namba Y, Watanabe T, Kimata Y :Mastectomy in female to male transsexuals. Acta Medica Okayama 63:243-247, 2009
掲載誌情報