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雑誌目次

雑誌文献

精神医学53巻9号

2011年09月発行

雑誌目次

巻頭言

精神分析を語る

著者: 松木邦裕

ページ範囲:P.830 - P.831

 小此木啓吾,下坂幸三,そして土居健郎と,精神分析を愛し精神分析の発展に尽された著名な先達が亡くなられた今,大方の精神科医には精神分析は遠いものになっているのかもしれない。

 しかし,この15年ほどの間に精神分析の実践も精神分析を支える組織も大きく変貌している。それは,わが国での精神分析という臨床実践が高い水準へと向かっている変化である。その実情をここに紹介したい。

座談会

蘇る日本のこころの支援

著者: 丹羽真一 ,   萬年甫 ,   都築正和 ,   島薗進 ,   朝田隆

ページ範囲:P.833 - P.843

2011年3月11日,東北を襲ったM9.4の地震は大津波を引き起こし,多くの命が失われました。また,この東日本大震災により,福島第一原発ではメルトダウンが起こり,周辺地域を中心に深刻な放射能被害をもたらしています。「精神医学」誌では,編集委員・朝田 隆氏を司会に4名のさまざまなお立場の方をゲストにお迎えし,この大きな災害に向き合い,立ち直っていく過程で精神医学はどうかかわっていくことができるのかを探るためにお話し合いいただきました。

研究と報告

レビー小体型認知症患者の幻視に対する心理的介入の有用性―2症例での検討

著者: 太田一実 ,   井関栄三 ,   村山憲男 ,   藤城弘樹 ,   新井平伊 ,   佐藤潔

ページ範囲:P.845 - P.853

抄録

 これまでの臨床経験や過去の報告を参考に,レビー小体型認知症の幻視に対する心理的介入法を開発し,実際に介入した2症例を呈示して,その有用性を検討した。心理的介入法の手順は,まず,患者が自分の症状を幻覚だと思っているかどうかの病識の有無を検討し,病識がない場合は患者の理解力を評価し,病識が獲得できる可能性を検討した。病識が獲得できる可能性のある場合は,幻視の機序と治療方針を説明した。最終的に,病識がある場合とない場合に分けて,患者および家族に日常生活上の工夫や環境調整を促す介入を行った。その結果,幻視の受容,不安感の軽減,幻視の出現頻度の低下,幻視内容の質的な変化などが期待できると考えられた。

有床総合病院精神科における精神科医と非精神科医による精神科時間外診療

著者: 中山秀紀 ,   丸田真樹 ,   浅利宏英 ,   加藤章信

ページ範囲:P.855 - P.862

抄録

 精神科救急の全貌を明らかにするために,非精神科医の診療した精神疾患患者の把握が必要である。対象は2006年4月1日から3年間に盛岡市立病院を時間外受診した全患者6,962件のうち,日当直医が精神症状を主訴に受診したと判断した509件である。非精神科医診療群は48.1%を占め,精神科医診療群に比べ男性,頻回受診者,帰宅者,身体愁訴の主訴,ICD-10によるF4の比率が有意に高かった。全体として「柔らかい救急」患者が多く,非精神科医がその多くを診療していた。「柔らかい救急」患者も,日中より精神症状が増悪している場合が多い。精神科医のみならず非精神科医の診療した患者群の把握は臨床的に重要である。

コンピュータトレーニングを用いた認知機能リハビリテーション―神経心理学的機能は改善するか

著者: 渡邊由香子

ページ範囲:P.865 - P.874

抄録

 認知機能リハビリテーションが統合失調症患者の中核的な障害である認知機能に及ぼす影響を調査した。研究参加者32名は同意のもとで,無作為に介入群と待機群に割り付けられた。認知機能障害に対し,週2回(うち1回は認知機能トレーニングのみ,もう1回はトレーニング後に約60分の言語グループを行う),全19回の介入を行った。その前後に神経心理学的評価,精神症状評価,社会生活機能評価を実施した。結果として,神経心理学評価総合点において有意な改善を認めた。今後の課題として,神経心理学的機能とともに,社会的機能を向上させる介入技術が必要と考えられた。

短報

約半年間で著明な改善を認めた嘔吐恐怖症の男児例

著者: 野呂浩史 ,   荒川和歌子

ページ範囲:P.875 - P.879

はじめに

 嘔吐恐怖症(emetophobia,以下EP)とは,「自身が嘔吐することや,他者の嘔吐を目撃すること,あるいは自身が他者の前で嘔吐することを過度に恐れ,苦痛を伴いながら耐え忍んでいる状態」であり5,8,9),DSM-Ⅳ-TRにおいては,特定の恐怖症の1つに分類されている。

 EPは通常幼少期に発症した後,慢性の経過をたどり,日常生活および社会生活に広範な影響を及ぼす2,3,5,8,9)。EPに併存する疾患としては,その他の不安障害やうつ病などの気分障害が報告されている2~5,8,9)。我々が検索した範囲では,EP発症初期の児童期から治療を開始し,症状の改善を認めたのは,雨宮らの報告例1)を含めごくわずかであった。

 今回,典型的なEPに抑うつ状態が併発し,日常生活上の支障を認めながらも約半年で著明な症状の改善を認めた男児の1例を経験したので報告する。なお,提示症例については本人および保護者から文書による承諾を得ているが,匿名性を保持するため,症例理解を損なわない範囲で変更を加えた。

初老期に笑い発作を発症し前頭葉てんかんが疑われた1例

著者: 平澤秀人 ,   木田次朗 ,   宗岡克政 ,   井川真理子 ,   内田直

ページ範囲:P.881 - P.884

はじめに

 てんかん性笑い発作は臨床的にまれな病態であり,視床下部過誤腫や皮質形成異常によるてんかんの症例に報告がみられるが,それらの発症年齢はほとんどが小児期である。今回我々は,初老期に笑い発作を発症し,発作時の脳波所見や臨床症状などから前頭葉てんかんが疑われた症例を経験したので,報告する。

ムンプス感染を契機に発症し,15年間診断に苦慮された辺縁系脳炎の1例

著者: 原田聰志 ,   福田貴博 ,   前上里泰史 ,   東川上浩之 ,   村上優 ,   高橋幸利

ページ範囲:P.887 - P.890

はじめに

 辺縁系脳炎とは,大脳辺縁系を冒す脳炎であり,原因から感染性脳炎(一次性脳炎)と自己免疫性辺縁系脳炎(二次性脳炎)に大別される。2003年に木村ら4)が,精神症状で発症し,比較的若年女性を冒し,画像所見に乏しい急性可逆性辺縁系脳炎として非ヘルペス性急性可逆性辺縁系脳炎(ARLE;acute reversible limbic encephalitis)の4例を報告。後にこれらの例に抗グルタミン酸受容体ε2(GluRε2)抗体が見出され,そのような例を自己抗体介在性急性可逆性辺縁系脳炎(AMEDARLE)と呼んだ5)。そして,近年抗NMDA抗体1),抗VGKC抗体が指摘され,さらにこれらの例の一部に卵巣奇形腫や胸腺腫が見つかるようになり,自己免疫のかかわりがクローズアップされてきている。今回我々はムンプス感染を契機に発症し,15年間診断に苦慮された辺縁系脳炎を経験したので報告する。

資料

児童思春期精神科治療施設の初回エピソード精神病に対するサービス調査

著者: 藤田純一 ,   西田淳志 ,   高橋雄一 ,   新井卓 ,   伊藤弘人 ,   岡崎祐士

ページ範囲:P.891 - P.897

はじめに

 近年諸外国において,高率に精神病へ移行する可能性のある高リスク群に関する実証的研究が進められ,日本でも一部の地域で思春期から青年期を対象とした治療・支援の実践が報告されるようになった14,15)。この高リスク群の治療や支援について,方法論やエビデンスは十分に確立されておらず,一般臨床に定着させるためには引き続き議論が必要である。しかし,明らかな精神病状態に至ったFEP(first episode psychosis)患者に関しては,精神病状態未治療期間の長さや後の再発回数が長期予後に影響する6,21)ことが知られている。いわゆる臨界期と呼ばれる時期以降は,確実かつ速やかな治療と支援が提供されるべきである。治療ガイドラインでも治療と支援が必要な患者の早期発見と発症後数年にわたる治療継続の重要性が強調され8),諸外国を中心に一定の指針が示されている13)。日本ではFEP患者を対象とした標準的な臨床実践が確立されておらず,好発年齢層の初期治療を担うと考えられる入院治療施設の治療と支援の実態は不明である。

 本研究の目的は,児童思春期病棟を有する病院群と精神科急性期および救急治療病棟を有する一般の精神科病院群との比較を通して,FEP患者に提供し得る早期治療・支援サービスの実態を把握することである。

総合病院救急外来を受診した児童青年期精神科患者の後方視的検討

著者: 武井明 ,   泉将吾 ,   目良和彦 ,   佐藤譲 ,   原岡陽一 ,   天野瑞紀 ,   鈴木太郎

ページ範囲:P.899 - P.905

はじめに

 児童青年期精神科医療に対する関心の高まりとともに,日本児童青年精神医学会の児童精神科認定医数が徐々に増加し9),2010年には浜松医科大学に全国の医学部で初めて児童青年期精神医学講座が開設されるようになった2)。また,児童青年期精神科医療に関する実態については,診療時間内の報告4,8,15)が散見されるが,夜間休日に救急外来を受診した児童青年期患者の検討は十分になされてはいない。

 今回我々は,市立旭川病院(以下,当院)救急外来を夜間休日に受診した児童青年期の精神科患者について臨床的な特徴を検討したので報告する。

紹介

「Kitwoodの公式」の有用性―対人心理要因への介入でBPSDが著明に改善したAD症例

著者: 上田諭 ,   大久保善朗

ページ範囲:P.907 - P.913

はじめに

 アルツハイマー病(AD)を主とする認知症の臨床において,行動心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia;BPSD)への対応はますます重要度の高い問題である。その対応としてはしばしば,非定型抗精神病薬や漢方薬による薬物療法と,回想法,芸術療法,物理的環境調整などの非薬物療法が議論の中心となるが,それら以前に重要な視点は,認知症のBPSDが,取り巻く人々のかかわりの仕方によって生じ,また増幅し得るということである。このことは従来,室伏10)の「理にかなったケアは治療の一環」,飯塚の「反応性症状」,松田ら7)の「周囲の人との関係性」などの観点で指摘され,認知症臨床の基本のはずであるが,現代の臨床への浸透は乏しいといわざるを得ない。これらの視点が置き去りにされたまま,BPSDという見方と用語が「安易に使用される」現状に対し批判の声8)も聞かれている。

 この重要性を端的に表したものとして,認知症症状に関する「Kitwoodの公式5)」(表)がある。症状の発症および増幅の要素として対人心理学的要因(social psychology)がかかわることを端的に示したもので,理解しやすく常に念頭に置きやすい「公式」として意義を持つと思われる。認知症ケアではよく知られた重要な公式であるが,精神科の認知症臨床においてはほとんど知られていない。

 本稿では,ADのBPSDに対して,薬物療法ではなく対人心理要因への介入が奏効した高齢者症例を提示し,認知症治療におけるその介入の意義を考察した。

 症例提示にあたっては,匿名性に配慮し若干の内容改変をしている。

私のカルテから

Digitalis内服当日にせん妄状態を呈した双極性障害の1例

著者: 藤井さやか ,   石川正憲 ,   渡邊裕貴

ページ範囲:P.915 - P.917

はじめに

 Digitalisは心房細動や心不全の治療に広く用いられ,同薬剤によるdigitalis中毒は,不整脈や下痢などの身体症状の他,せん妄などの精神症状もあり,慢性投与もしくは過量服薬によって生じることが多いとされている2)。今回,我々は,digitalisの内服当日からせん妄状態を呈し,薬剤中止により速やかに軽快した1例を経験したため報告する。なお,報告にあたって,口頭にて本人および家族の同意を得た。また,科学的考察に支障のない範囲で本人のプライバシー保護のため,病歴の一部を修正した。

連載 「継往開来」操作的診断の中で見失われがちな,大切な疾病概念や症状の再評価シリーズ

自己臭妄想症

著者: 村上靖彦

ページ範囲:P.919 - P.921

はじめに

 自己臭妄想とは,「自分の体から人を不快にさせる嫌な臭いが発散している」との妄想的確信である。これは,たとえば強迫症状と同じように,臨床的にはさまざまな精神疾患に出現し得るものではあるが,往々にして自己臭妄想を唯一の症状として持続的に経過する症例があり,その場合には,強迫神経症あるいは体感症(セネストパチー)と同じように,「疾患」として,自己臭妄想症と呼ばれる。

 わが国では,自己臭妄想は対人恐怖症に所属する1症状として位置づけられることが一般的であるが,その「重症性」/「確信性(妄想性)」において若干特殊な位置づけがなされている。この「重症性」には2つの理由があり,その1つは,自己臭妄想症がしばしば統合失調症に「移行する」ということであり,今1つは,訴えの「確信性」の強さにあると思われる。前者については統合失調症の「定義」にもかかわる問題であり,慎重な討論が必要とされるが,後者については恐怖症と関係するものである。事実,自己臭妄想はしばしば自己臭恐怖とも呼ばれるが,現実的に恐怖症における「恐怖」と「確信(妄想)」を区別することはそれほど容易なことではない。これは,醜形恐怖における「確信度」を考えてみれば容易に理解できることである。

 ちなみに,自己臭におけるこのような「恐怖」か「妄想」かの議論を棚上げするかたちで,「自己臭症」なる病名を提案する研究者もいるが2),これは適切ではない。これでは「腋臭症」と「腋臭恐怖症」の区別がつかない。

「精神医学」への手紙

東日本大震災被災者への精神科的対応についての私見―根こぎうつ病への注目を

著者: 佐藤晋爾 ,   朝田隆 ,   土井永史

ページ範囲:P.922 - P.922

 震災から2か月以上過ぎ,「こころのケアが問題」という報道が出始めている。我々も,4月下旬,福島県相馬市で4日間,茨城県立こころの医療センターと合同の現地医療活動のお手伝いをさせていただいた。

 被災地で避難者の方々のお話をうかがって,今回の震災の特徴は,よく指摘される「広域である」以外に,津波と地盤沈下で水没した地区があるという点ではないかと感じた。避難者の方々は「生まれ故郷がなくなった」「自分が育ってきた土地は海になって住めなくなった」「先祖代々の土地がなくなった」「墓がなくなった。親族に申し訳ない」とおっしゃっていた。これまでの震災は,「家屋や家財をなくす」ことはあっても,突然「土地を失う」ことはなかったのではなかろうか。被災者の方々がおっしゃる「土地」とは,まさに己のアイデンティティそのものであり,個人を超えて「引き継がれていく」ものとしての「土地」であろう。それを失うことの打撃は非常に大きいのではないか。

書評

―山内俊雄,小島卓也,倉知正佳,他 編,加藤 敏,朝田 隆,染矢俊幸,他 編集協力―専門医をめざす人の精神医学 第3版

著者: 融道男

ページ範囲:P.923 - P.923

第3版を読んで

 専門医制度は提唱以来約半世紀を経て,ようやく軌道に乗ってきている。第3版は半数以上の章で筆者が交代し,全体的に書き直された。増ページを含めた大幅な改訂がなされて,いっそう充実した新しい教科書を読んだ。最新の情報に感銘を受けたページが多々あった。私は,その中から,若い精神科医に読んでいただきたい項目として3か所を選んだ。

 まず,新井康允による『性機能』(92-99ページ)では,男女の性差から始める。『精巣と卵巣の分化』について,図1-37に性腺原基の性分化を基礎的によくわかるように解説している。「思春期発動に最も重要な役割を果たすのは,視床下部にあるゴナドトロピン放出ホルモン[GnRH]を産生し放出するGnRHニューロンの働きである」と,図1-38で下垂体系を含めたGn分泌調節の働きが性機能調節にフィードバック作用で重要な役割を果たしていることを示している。

―Brian S. Everitt,Simon Wessely 著,樋口輝彦,山田光彦 監訳,中川敦夫,米本直裕 訳―ロンドン大学精神医学研究所に学ぶ―精神科臨床試験の実践

著者: 古川壽亮

ページ範囲:P.924 - P.924

精神医学における臨床試験で留意すべき点が示された名著

 本書の真骨頂は,タイトルの通り,精神医学における臨床試験を正面切って取り扱い,その必要不可欠なことを論理的に説明し,具体的な手順と注意点を列記し,そして現行の臨床試験が陥りがちな陥穽に警鐘を鳴らしている点である。

 よい精神医療を行うために臨床試験が必要であることに納得できない方には,ぜひ本書を書棚に置いて折に触れて読んでいただきたい。本書には,世にいう臨床試験への批判は必ずしも故なき非難ではないこと,しかし神ならぬ人間にはよい精神医療を行うためにはよい臨床試験を行うしか手がないこと,そしてそのためには精神科臨床試験で何に留意しなくてはならないかが書かれている。

―石原健司,塩田純一 著,山鳥重,河村満,池田学シリーズ 編集―《神経心理学コレクション》―病理から見た神経心理学

著者: 岩田誠

ページ範囲:P.925 - P.925

神経心理学に興味を持つ多くの人々に

 書評はなぜ存在するのか。答えは明快である。それは,その書評を読んだ人の,その本に対する購入行動の選択に役立てるためである。したがって,書評では結論が重要である。その本を購入すべきか,購入する必要がないか,それをまずはっきりさせることがなければ,書評の存在意義はない。したがって,書評を依頼された評者は,購入すべきという結論に達し得る本の書評だけを引き受けることになるのが普通である。なぜなら,書評を頼まれながら,その本は買うに値せず,という書評を書くというようなことは,まず仁義にもとるという点からも,あり得べからざることなのである。すなわち,私が本書の書評を書くことを引き受けたということは,この本が,1人でも多くの方によって購入され,読まれ,そしてさまざまな議論を巻き起こす源になってほしいと思うからである。

 近代医学を支えてきた基盤は科学的な思考であり,その中心にあるのは,論理性,客観性,普遍性という三原則である。この三原則が十分に満たされていないものは,偽科学として退けられ,これらを満たすもののみが,科学的真理として受け入れられる。そして,医学の分野においては,18世紀以来,この三原則を保障する原理の基となってきたのが,病理解剖学であった。欧米の病理解剖室には“hic locus est ubi mors gaudet vitae succrrere”という言葉が掲げられているが,その意は“ここは,死者が生者を教える場である”であり,病理解剖学で得られた最終的な所見なしには,生前のいかなる解釈も無意味であるということを教え諭すものである。本書は,病理解剖室でのこの教えを,大脳皮質の変性性疾患において実践したという意味で,きわめて貴重なドキュメントであるだけでなく,そのような方法論をいかにして個々の症例に適応していくかを考えるうえでも,大きな意義を持つ書物である。

学会告知板

うつ病リワーク研究会 医療従事者向け研修会

ページ範囲:P.897 - P.897

 医療機関でリワーク活動をこれから始める,または始めたばかりの方,改めてリワークプログラムについて基本から確認したい方を対象に開催します。

日時 2011年11月20日(日) 10:30~16:00

会場 全国町村会館(東京都千代田区永田町1-11-35 地下鉄永田町駅徒歩1分)

論文公募のお知らせ

テーマ:「東日本大震災を誘因とした症例報告」

ページ範囲:P.874 - P.874

「精神医学」誌では,「東日本大震災を誘因とした症例報告」(例:統合失調症,感情障害,アルコール依存症の急性増悪など)を募集しております。先生方の経験された貴重なご経験をぜひとも論文にまとめ,ご報告ください。締め切りはございません。随時受け付けております。

ご論文は,「精神医学」誌編集委員の査読を受けていただいたうえで掲載となりますこと,ご了承ください。

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今月の書籍

ページ範囲:P.918 - P.918

次号予告

ページ範囲:P.913 - P.913

投稿規定

ページ範囲:P.927 - P.928

著作財産権譲渡同意書

ページ範囲:P.929 - P.929

編集後記

著者:

ページ範囲:P.930 - P.930

 本号では〈座談会〉で「蘇る日本のこころの支援」を掲載した。東日本大震災を受けて急遽,企画したものであるが,編集委員の1人として改めて読み返してみて非常に読み応えのある内容に仕上がっていると感じた。各氏それぞれのお立場から災害や戦争に関連した思い出や感慨を述懐してくださっているが,それぞれのお言葉がこころに沁みる内容であった。精神科医療に携わる我々が,今回の大震災に際して,あるいは震災後の社会の中で,どのような役割を果たすべきなのかということを考えるときの礎の1つにさせていただきたいと考えている。4氏の先生方にこの場を借りてお礼を申し上げたい。

 さて,「研究と報告」では,「レビー小体型認知症患者の幻視に対する心理的介入の有用性」,「有床総合病院精神科における精神科医と非精神科医による精神科時間外診療」,「コンピュータトレーニングを用いた認知機能リハビリテーション」の3題が掲載された。いずれも一昔前の精神医学関連の雑誌ではあまり考えられないようなテーマの原著論文である。しかし,認知症への心理学的理解と介入,総合病院での精神医学の実践,統合失調症者の社会復帰,と括ればきわめて今日的で重要なテーマであることは一目瞭然である。今後のさらなる実践と研究を期待したい。「短報」も嘔吐恐怖症の小児例,てんかん性笑い発作の初老期の1例,辺縁系脳炎の1例,など臨床的に重要な症例報告が並んだ。「私のカルテから」にも1例の症例報告がなされている。読者諸氏の日常診療の参考になれば幸いである。

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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