精神医学53巻9号

2011年09月発行

研究と報告

有床総合病院精神科における精神科医と非精神科医による精神科時間外診療

著者： 中山秀紀¹ 丸田真樹² 浅利宏英³ 加藤章信⁴

所属機関： ¹独立行政法人国立病院機構久里浜アルコール症センター ²横浜相原病院 ³玉山岡本病院 ⁴盛岡市立病院

ページ範囲：P.855 - P.862

抄録

　精神科救急の全貌を明らかにするために，非精神科医の診療した精神疾患患者の把握が必要である。対象は2006年4月1日から3年間に盛岡市立病院を時間外受診した全患者6,962件のうち，日当直医が精神症状を主訴に受診したと判断した509件である。非精神科医診療群は48.1％を占め，精神科医診療群に比べ男性，頻回受診者，帰宅者，身体愁訴の主訴，ICD-10によるF4の比率が有意に高かった。全体として「柔らかい救急」患者が多く，非精神科医がその多くを診療していた。「柔らかい救急」患者も，日中より精神症状が増悪している場合が多い。精神科医のみならず非精神科医の診療した患者群の把握は臨床的に重要である。

参考文献

1) 飛鳥井望，西山詮，三宅由子，他：精神科救急医療の実態―首都圏7施設共同一斉調査の結果から．精神経誌 36：122-137, 1994

2) 藤井勉，河合義治，谷口保子，他：富山県立中央病院における精神科救急―平成3～8年度の集計から．富山県立中央病院医学雑誌 22：17-22, 1999

3) 藤原頼亭，黒川泰夫，工藤浩：精神科救急医療の本院での現状と課題．岩見沢市立総合病院医誌 24：37-41, 1998

4) 後藤由和：自殺企図手段と精神障害の関係．日救急医会誌 20：861-870, 2009

5) 堀内雅之，小林穣，梨田忠良，他：むつ総合病院における診療時間外の精神科患者の受診状況．むつ総合病院医誌 12：34-38, 1999

6) 賀古勇輝，櫻井高太郎，粟田紹子，他：当院における精神科救急の現状―地方都市基幹総合病院有床精神科の役割．市立室蘭医誌 27：22-26, 2002

7) 古塚大介，鄭庸勝，鈴木太，他：総合病院における精神科救急医療の実態―大阪府域の精神科救急医療実態調査から．大阪市勤務医師会研究年報 34：1-7, 2007

8) 熊倉徹夫：精神科救急の実情―いわゆる“堅い”精神科救急．医学のあゆみ 147：112, 1988

9) 松原敏郎，河合宏治，本田真広，他：山口県立総合医療センター救命救急センターにおける自殺企図患者の現状．精神医学 50：329-335, 2008

10) 中山秀紀：高度救命救急センターにおける精神科救急について．岩手医誌 57：559-565, 2006

11) 西山詮：堅い精神科救急(緊急鑑定)の実態と改革．精神経誌 86：89-119, 1984

12) 小田孝：五島中央病院における精神科救急の現状．五島中央紀要 11：3-9, 2009

13) 大野裕，浅井昌弘，荒木信夫，他：内科初診患者の身体表現性障害の有病率―WHO国際共同研究から．日本医事新報 3734：49-52, 1995

14) 島　悟，大川日出夫，稲垣恭孝，他：内科患者におけるうつ病．日本医事新報 3576：28-31, 1992

15) 篠田淳子，岩波明，上島国利：精神科における時間外受診患者の臨床的検討．臨精医 29：1249-1255, 2000

16) 鈴木博子：総合病院精神科における精神科救急―時間外診療を通して．医学のあゆみ 190：205-208, 1999

17) 鈴木博子，木村真人，竹澤健司，他：自殺企図患者における精神科継続医療の重要性に関する検討．日救急医会誌 14：145-152, 2003

18) 高橋武久，小出恭彦：精神科基幹病院としての総合病院精神科．日社精医誌 11：102-107, 2002

19) 田村達辞，岡本泰昌，皆川英明，他：1総合病院の救急外来における精神科救急―特に身体医の関与．精神医学 41：101-103, 1999

20) 臼井勝也，松倉真弓，藤井明人，他：当院救命救急センターにおける精神科救急の実態―過去3年間の調査報告．市立釧路医誌 19：21-26, 2007

21) Whooley MA, Avins AL, Miranda J, et al：Case-Finding instruments for depression. two questions are as good as many. J Gen Intern Med 12：439-445 1997

22) 吉田成良：県立総合病院における精神科救急の実践．精神経誌 111：1128-1130, 2009