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短報
約半年間で著明な改善を認めた嘔吐恐怖症の男児例
著者: 野呂浩史1 荒川和歌子2
所属機関: 1南平岸内科クリニック精神神経科 2南平岸内科クリニック臨床心理部門
ページ範囲:P.875 - P.879
文献購入ページに移動嘔吐恐怖症(emetophobia,以下EP)とは,「自身が嘔吐することや,他者の嘔吐を目撃すること,あるいは自身が他者の前で嘔吐することを過度に恐れ,苦痛を伴いながら耐え忍んでいる状態」であり5,8,9),DSM-Ⅳ-TRにおいては,特定の恐怖症の1つに分類されている。
EPは通常幼少期に発症した後,慢性の経過をたどり,日常生活および社会生活に広範な影響を及ぼす2,3,5,8,9)。EPに併存する疾患としては,その他の不安障害やうつ病などの気分障害が報告されている2~5,8,9)。我々が検索した範囲では,EP発症初期の児童期から治療を開始し,症状の改善を認めたのは,雨宮らの報告例1)を含めごくわずかであった。
今回,典型的なEPに抑うつ状態が併発し,日常生活上の支障を認めながらも約半年で著明な症状の改善を認めた男児の1例を経験したので報告する。なお,提示症例については本人および保護者から文書による承諾を得ているが,匿名性を保持するため,症例理解を損なわない範囲で変更を加えた。
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