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文献詳細

雑誌文献

精神医学53巻9号

2011年09月発行

文献概要

短報

約半年間で著明な改善を認めた嘔吐恐怖症の男児例

著者: 野呂浩史1 荒川和歌子2

所属機関: 1南平岸内科クリニック精神神経科 2南平岸内科クリニック臨床心理部門

ページ範囲:P.875 - P.879

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はじめに

 嘔吐恐怖症(emetophobia,以下EP)とは,「自身が嘔吐することや,他者の嘔吐を目撃すること,あるいは自身が他者の前で嘔吐することを過度に恐れ,苦痛を伴いながら耐え忍んでいる状態」であり5,8,9),DSM-Ⅳ-TRにおいては,特定の恐怖症の1つに分類されている。

 EPは通常幼少期に発症した後,慢性の経過をたどり,日常生活および社会生活に広範な影響を及ぼす2,3,5,8,9)。EPに併存する疾患としては,その他の不安障害やうつ病などの気分障害が報告されている2~5,8,9)。我々が検索した範囲では,EP発症初期の児童期から治療を開始し,症状の改善を認めたのは,雨宮らの報告例1)を含めごくわずかであった。

 今回,典型的なEPに抑うつ状態が併発し,日常生活上の支障を認めながらも約半年で著明な症状の改善を認めた男児の1例を経験したので報告する。なお,提示症例については本人および保護者から文書による承諾を得ているが,匿名性を保持するため,症例理解を損なわない範囲で変更を加えた。

参考文献

1) 雨宮直子,野崎剛弘,植田美津子,他:『行動制限を用いた認知行動療法』が有効であった,経口摂取ができず著明なやせをきたした嘔吐恐怖の1例.心身医 45:873-879, 2005
2) Boschen MJ:Reconceptualizing emetophobia:A cognitive behavioral formulation and research agenda. J Anxiety Disord 21:407-419, 2007
3) Davidson AL, Boyle C, Lauchlan F:Scared to lose control? General and health locus of control in females with a phobia of vomiting. J Clin Psychol 64:30-39, 2008
4) Lelliott P, McNamee G, Marks I:Features of agora-, social, and related phobias and validation of the diagnosis. J Anxiety Disord 5:312-322, 1991
5) Lipsitz JD, Fyer AJ, Paterniti A, et al:Emetophobia:Preliminary results of an internet survey. Depress Anxiety 14:149-152, 2001
6) 野呂浩史,荒川和歌子,本間美紀:嘔吐恐怖症を併発したパニック障害患者の検討.日心療内誌 13:10-15, 2009
7) 野呂浩史,荒川和歌子,本間美紀:嘔吐恐怖を併発したパニック障害患者の病態と治療.分子精神医学 10:70-73, 2010
8) Overveld M, Jong PJ, Peters M L, et al:An internet-based study on the relation between disgust sensitivity and emetophobia. J Anxiety Disord 22:524-531, 2008
9) Veale D, Lambrou C:The psychopathology of vomit phobia. Behavioural and Cognitive Psychotherapy 34:139-150, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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