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雑誌文献

精神医学53巻9号

2011年09月発行

文献概要

資料

児童思春期精神科治療施設の初回エピソード精神病に対するサービス調査

著者: 藤田純一12 西田淳志23 高橋雄一4 新井卓1 伊藤弘人2 岡崎祐士5

所属機関: 1神奈川県立こども医療センター 児童思春期精神科 2国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所社会精神保健研究部 3東京都精神医学総合研究所 4横浜市立大学附属市民総合医療センター 精神医療センター 5東京都立松沢病院

ページ範囲:P.891 - P.897

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はじめに

 近年諸外国において,高率に精神病へ移行する可能性のある高リスク群に関する実証的研究が進められ,日本でも一部の地域で思春期から青年期を対象とした治療・支援の実践が報告されるようになった14,15)。この高リスク群の治療や支援について,方法論やエビデンスは十分に確立されておらず,一般臨床に定着させるためには引き続き議論が必要である。しかし,明らかな精神病状態に至ったFEP(first episode psychosis)患者に関しては,精神病状態未治療期間の長さや後の再発回数が長期予後に影響する6,21)ことが知られている。いわゆる臨界期と呼ばれる時期以降は,確実かつ速やかな治療と支援が提供されるべきである。治療ガイドラインでも治療と支援が必要な患者の早期発見と発症後数年にわたる治療継続の重要性が強調され8),諸外国を中心に一定の指針が示されている13)。日本ではFEP患者を対象とした標準的な臨床実践が確立されておらず,好発年齢層の初期治療を担うと考えられる入院治療施設の治療と支援の実態は不明である。

 本研究の目的は,児童思春期病棟を有する病院群と精神科急性期および救急治療病棟を有する一般の精神科病院群との比較を通して,FEP患者に提供し得る早期治療・支援サービスの実態を把握することである。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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