精神医学53巻9号

2011年09月発行

私のカルテから

Digitalis内服当日にせん妄状態を呈した双極性障害の1例

著者： 藤井さやか¹ 石川正憲¹ 渡邊裕貴¹

所属機関： ¹国立精神・神経医療研究センター病院精神科

ページ範囲：P.915 - P.917

はじめに

　Digitalisは心房細動や心不全の治療に広く用いられ，同薬剤によるdigitalis中毒は，不整脈や下痢などの身体症状の他，せん妄などの精神症状もあり，慢性投与もしくは過量服薬によって生じることが多いとされている²⁾。今回，我々は，digitalisの内服当日からせん妄状態を呈し，薬剤中止により速やかに軽快した1例を経験したため報告する。なお，報告にあたって，口頭にて本人および家族の同意を得た。また，科学的考察に支障のない範囲で本人のプライバシー保護のため，病歴の一部を修正した。

参考文献

1) 風祭元，中込和幸：医薬品による精神障害．神精薬理 10：5-24, 1988

2) Shear MK, Sacks MH：Digitalis delirium：Report of two cases. Am J Psychiatry 135：109-110, 1978

3) Stuart JE, Gershengorn KN, Unger R：Digoxin-induced organic brain syndrome. Am Heart J 106：419-420, 1983

4) 鈴木孝雄，辻本登志英，吉山毅，他：ICUにおける薬原性精神症状を呈した4症例．日臨麻会誌 12：125-129, 1992

5) 玉垣千春，村田章，坂田哲二他：有効血清濃度域でDigitalisせん妄を呈した高齢者の一症例．精神科治療 11：163-166, 1996

6) Wamboldt FS, Jefferson JW, Wamboldt MZ：Digitalis intoxication misdiagnosed as depression by primary care physicians. Am J Psychiatry 143：219-221, 1986