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研究と報告
Aripiprazoleが奏功した緘黙を伴う転換性障害の1例
著者: 菊池章1 鈴木志欧也1
所属機関: 1浦和神経サナトリウム
ページ範囲:P.39 - P.44
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25歳の福祉施設で働く男性が,緘黙状態に陥り,出勤不能になって来院した。患者には,緘黙に陥るに至った心理的に了解可能な状況が認められ,症状に対する無関心さがあることなどから,転換性障害と診断した。主剤として,sulpirideを10週間使用したが効果がなく,aripiprazoleに変更したところ,3日目に会話が可能となり,表情が生き生きとするとともに緘黙症状は著明に軽快した。緘黙は,dopamine系の失調と深い関係にあると考えられるが,aripiprazoleのdopamine受容体に対する部分アゴニストとしての特殊な働きが緘黙症状の軽快に寄与したと考えた。
25歳の福祉施設で働く男性が,緘黙状態に陥り,出勤不能になって来院した。患者には,緘黙に陥るに至った心理的に了解可能な状況が認められ,症状に対する無関心さがあることなどから,転換性障害と診断した。主剤として,sulpirideを10週間使用したが効果がなく,aripiprazoleに変更したところ,3日目に会話が可能となり,表情が生き生きとするとともに緘黙症状は著明に軽快した。緘黙は,dopamine系の失調と深い関係にあると考えられるが,aripiprazoleのdopamine受容体に対する部分アゴニストとしての特殊な働きが緘黙症状の軽快に寄与したと考えた。
参考文献
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