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短報
「合法ハーブ」によって激しい幻覚妄想が出現した合成カンナビノイド依存の1例
著者: 吉田精次1
所属機関: 1藍里病院
ページ範囲:P.53 - P.55
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近年,薬物汚染が拡大している。乱用の対象となる薬物は多様化し,海外のドラッグカルチャーの影響を受けてファッション化している。特に,インターネットの普及とともに濫用が加速している。薬事法に抵触しないように巧妙に販売されるドラッグは,「合法ドラッグ」「脱法ドラッグ」「ケミカルドラッグ」「デザイナードラッグ」「スマートドラッグ」などと命名されるようになった。厚生労働省は2005年にこれらのドラッグを「違法ドラッグ」と命名し,正式な行政文書ではこの表現が使われている。
この「合法ドラッグ」の1つに,大麻の麻薬成分であるTHC(tetrahydrocannabinol)と類似した分子構造を持つ物質を人工的に作った合成カンナビノイドがあり,これをナチュラルハーブに吹き付けたものが「合法ハーブ」と称されている。合成カンナビノイドは大麻同様,急性中毒症状(酩酊)と中毒性精神病を引き起こすと考えられる。大麻精神病の報告はこれまでになされているが2,3,5),筆者の知る限りでは本邦において合成カンナビノイドによる精神病症状の報告はなかった。今回筆者が経験した「合法ハーブ」吸煙により重篤で持続性の精神病状態に陥った症例を報告し,合成カンナビノイドの有害性について注意を喚起したい。
本報告を行うことについての本人の同意を口頭で得た。また個人情報は症例報告の本質にかかわらない程度に改変してある。
近年,薬物汚染が拡大している。乱用の対象となる薬物は多様化し,海外のドラッグカルチャーの影響を受けてファッション化している。特に,インターネットの普及とともに濫用が加速している。薬事法に抵触しないように巧妙に販売されるドラッグは,「合法ドラッグ」「脱法ドラッグ」「ケミカルドラッグ」「デザイナードラッグ」「スマートドラッグ」などと命名されるようになった。厚生労働省は2005年にこれらのドラッグを「違法ドラッグ」と命名し,正式な行政文書ではこの表現が使われている。
この「合法ドラッグ」の1つに,大麻の麻薬成分であるTHC(tetrahydrocannabinol)と類似した分子構造を持つ物質を人工的に作った合成カンナビノイドがあり,これをナチュラルハーブに吹き付けたものが「合法ハーブ」と称されている。合成カンナビノイドは大麻同様,急性中毒症状(酩酊)と中毒性精神病を引き起こすと考えられる。大麻精神病の報告はこれまでになされているが2,3,5),筆者の知る限りでは本邦において合成カンナビノイドによる精神病症状の報告はなかった。今回筆者が経験した「合法ハーブ」吸煙により重篤で持続性の精神病状態に陥った症例を報告し,合成カンナビノイドの有害性について注意を喚起したい。
本報告を行うことについての本人の同意を口頭で得た。また個人情報は症例報告の本質にかかわらない程度に改変してある。
参考文献
1) Atwood BK, Huffman J, Straiker A, et al:JWH018, a common constituent of “Spice” herbal blends, is a potent and efficacious cannabinoid CB1 reseptor agonist. Br J Pharmacol 160:585-593, 2010
2) 滝口直彦,石川義博,大河内恒,他:カンナビス精神病と犯罪.精神医学 31:477-485, 1989
3) 徳井達司,米元利彰,岩下覚,他:大麻精神病の6例.精神医学 31:919-929, 1989
4) Uchiyama N, Kikura-Hanajiri R, Ogata J, et al;Chemical analysis of synthetic cannabinoids as designer drugs in herbal products. Forensic Sci Int 20:31-8, 2010
5) 横山尚洋,村上雅昭,片山信吾:マリファナ精神病の3例.精神医学 33:235-242, 1991
6) Zuba D, Byrska B, Maciow M:Comparison of "herbal highs" composition. Anal Bioanal Chem 400:119-126, 2011
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