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世界精神医学会第15回ワールド・コングレスに参加して
著者: 井上弘寿1 井上かな1 加藤敏1
所属機関: 1自治医科大学精神医学教室
ページ範囲:P.99 - P.99
文献購入ページに移動オープニング・セッションでは,まずWPAの長であるM. Maj教授(ナポリ大学精神科)が,彼の3年の任期中に行った活動を13項目にわたって報告した。たとえば,ICD-11の開発におけるWPAの貢献,WPAの機関誌である『World Psychiatry』誌が精神医学関係の国際誌で9番目のインパクト・ファクター(5.562)を記録したこと,日本の東日本大震災を含めた災害に対するWPAの協力などが報告された。加えて,MajはWPAと製薬会社との関係を検討する必要性について言及した。続いて,学会賞であるJean Delay賞を受賞したK.S. Kendler教授(Virginia Commonwealth大学精神科)が「Psychiatric genetics:an empirical and conceptual overview」と題する受賞講演を行った。Kendlerは,統合失調症や大うつ病,アルコール依存における遺伝および環境因の寄与に関する実証的な研究を紹介した上で,現代の精神医学において次の2つの態度が要請されることを主張した。すなわち,1つは,研究および臨床実践において,先入観ではなくあくまでデータに基づいた概念的な厳密さを保ちながら,なおかつ幅広く寛容な“pluralist”の立場に立つことが肝要であるということ。そしてもう1つは,私たちが精神科医として直面する人生の意味に関する深遠な問いと格闘することを恐れてはならないということであった。科学的精神とならび哲学的な精神の必要性を説く氏の言葉は大いに傾聴に値すると思われる。オープニング・セッションの後,一流の演奏家とダンサーによる情熱的なタンゴ・ショーが披露された。
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