文献詳細
特集 アルコール・薬物関連障害
HIV診療における薬物乱用問題―総合病院精神科は何をすべきなのか?
著者: 今村顕史1
所属機関: 1がん・感染症センター都立駒込病院感染症科
ページ範囲:P.1127 - P.1132
文献概要
HIV(human immunodeficiency virus)感染症は,かつては「AIDS(acquired immune deficiency syndrome)=死」というイメージの致死的疾患であった。しかし,抗HIV薬による治療のめざましい進歩によって,現在は早期に診断すればコントロール可能な慢性疾患となっている。
近年,わが国の診療現場においても,HIV陽性者における違法あるいは脱法の薬物乱用が急増してきている。長期療養を続けていく中で起こってくる薬物乱用は,安定した抗HIV療法を妨げる要因となってしまう。したがって,HIV診療に関わる多くのスタッフが,薬物乱用を診療現場で向き合っていかなければならない大きな課題と考えるようになってきた。
HIV感染症は,早期診断,早期治療が重要な疾患である。同じように薬物乱用も,早期に発見し,早期に対応していくことが必要だろう。HIV診療の現場では,医療スタッフが意識して接するようになったことで,患者の薬物使用をより早期に発見する機会が増えてきている。しかし,せっかく早期に薬物使用について知ることができても,それをサポートする診療体制が整っていなければ対応することはできない。HIVの専門医師である筆者が今切実に願っているのは,もっと多くの精神科医師に,早期の段階から薬物依存症に関わってもらいたいということである。
参考文献
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