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特集 障害者権利条約批准に係る国内法の整備:今後の精神科医療改革への萌芽
障害者権利条約と精神医療
著者: 伊藤哲寛1
所属機関: 1北見赤十字病院
ページ範囲:P.125 - P.135
文献購入ページに移動2006年の国連総会において「障害者の権利に関する条約」(以下,障害者権利条約)が採択され,2008年に発効した。2011年9月の時点で105か国が批准している。日本政府も批准に向けて,障害当事者の意見を取り入れながら,障害関連法の点検と見直しを行っている。
わが国では,長い間,保護と収容を優先させる精神保健医療福祉施策を続けてきた。その結果,精神障害者の地域からの疎外,精神病床の過剰,低水準の医療,貧しい療養環境での社会的入院,地域資源の未成熟など,容易に改善しがたい状況を招いてしまった。1987年に精神衛生法が精神保健法に改められ,入院精神障害者の人権に関する条項が取り入れられ,医療従事者の人権認識も深まった。しかし,現実には精神障害者の同意なしの入院患者数は減らず,その入院環境や処遇の改善は十分でない。また地域においても差別されることなく他の人々と同等な条件で質の高い生活を送ることができるようになっているわけではない。
当事者の権利保障という視点を抜きにして進められてきたこれまでの精神保健医療福祉施策が,障害者権利条約の批准を契機に,大きく転換されることが期待される。
本稿では,「障害者権利条約」の成立の背景,条約の意義,条約の内容を述べたうえで,この条約が精神障害に関連する国内法制度,特に非自発入院制度に及ぼす影響に焦点を当てて考察する。
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